愛故に気づいてはいけない。 ×in (ページ12)

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「…はぁ？そんな事で？？」

前言撤回。

やっぱ、話さなきゃ良かった。
　

「そんな事じゃねぇしっ！俺には、サッカーしかないからっ…！！」

意地になって、声を荒げる。

涙が出てきそう。

「お前なんかに分かる訳……！！」

ふわっと暖まる体。ほのかに香る、自然ないい香り。

俺は、目の前のそいつに抱きしめられていた。

「でも、死にたいって考えるほど辛かったんだろ。

その気持ちまで俺は否定しないよ。」

でも、飛び降りようなんて簡単に考えるなよ。

そう言って、俺の頭を撫でてくる。

目頭が熱い。

いらない言葉ばかり、口から零れていく。

「だって、だって…。ずっと、努力してきたんだ。

部員に、妬まれても、嫌がらせされても、俺は

そいつらより上手いから、努力してきたからって

自分に、言い聞かせてっ… 。」

うん。うん。と、小さい相槌が心地よい。

「でも、交通事故にあって足を大怪我して

もうサッカーは出来ないなんて、

だったら命なんて助からなくて良かった！！

…何時も冷たい親が褒めてくれたのは

サッカーだけだったから。」
　

「そっか。辛かったね。」

その何気ない言葉で、俺の涙線は壊れた。

　

何時の間にか、名前も分からないそいつの胸の中で

散々泣き喚いていた。

俺が、泣いている最中ただただ頭を撫でて抱きしめくれる、
そいつに何処か好感さえ持ててきてしまった。

涙が枯れて、そいつの腕から解放されてきた頃。

「名前、何ていうの。」

名前すら分からないそいつに鼻声の声で問う。

「伊野尾慧。お前は？」

「山田涼介…。」

聞いてしまった。

名前すら分からないそいつに。

「また、屋上であえる…？」

「うん、お前が飛び降りようなんて思わなくなるまで。」

そう言った伊野尾ちゃんは、

昨日屋上から飛び降りた。

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山田さんの過去話。長編にしたい