愛故に気づいてはいけない。 ×in (ページ2)

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あれから、数分。

楽屋にメンバーが、入ってきた。

隣の伊野尾くんは、薮くんが来ないせいか

心なしか視線が時計をみたり、ドアを見たりと泳いでいる。

あ。薮くんだ。

「おはよー…」

と少し眠そうな目を擦り、薮くんは近くのソファへと座った。

隣の伊野尾くんはチラッと薮くんの方を見ると

嬉しそうに口角を上げ、わざとらしくスマホを見ている。

それも、薮くんに話しかけてほしいアピールなんだろうなと

思うと胸にチクリと針が刺さった感覚に襲われ

思わず顔をしかめてしまう。

「伊野尾くん、薮くんに話しかけないの?」

とわざとらしく耳元で囁くと、

馬鹿じゃねぇの!?と耳を真っ赤にして睨み付けてくる。

外から見れば可愛いなと思う反応でも、

俺にとっては勝ち目がないと再確認させられる止めの一撃。

自分で言っといて、傷つくとか馬鹿だな。

なんだか、伊野尾くんを見てると溢れてきた

感情が涙になって出てきそうで、伊野尾くんの肩をおす。

「ほら、早く薮くんの隣いきなよ。」

俺が押した反動で立ち上がった伊野尾くんは、

「あー、もう。分かったって」

と言って薮くんの方へ向かう。

急に、こっちを一度振り向いて、舌をだし悪戯に笑う伊野尾くん。

「ふはっ…おもしねぇな。伊野尾くんは。」

馬鹿にするように、笑うと伊野尾くんは

たれ目な目を少し釣り上げ、薮くんに

「やぶぅー、高木がいじめてくる!」

とドスッと薮くんの隣に腰掛ける。

「そーですか。伊野尾が何かいったんだろ？」

「言ってないもん ! 」

「嘘つけー。」

そう言った薮くんは、伊野尾くんの頭をぐしゃくじゃと

乱暴に撫でる。

そうされて、肩を揺らして笑う伊野尾くんを

愛しそうになでる薮くん。

「なんだ。両思いなんじゃないの。」

その呟きはうるさい楽屋の音にかき消された。

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