漆黒の境界線 act.Ⅰ (ページ10)

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Episode3-2 ページ10

米花町・路地裏。
携帯電話を通じて、連絡をしていた。相手先から別の人の声が微かに聞こえる。
「例の事件で亡くなったのは嘘だよ」
『……そうか』
「後、厄介な人たちが絡みそうよ。それも殺るのよね？」
『あぁ』
その会話を遠くの死角で燭台切光忠と藤宮琉奈が聞いていた。
「ちょっと我慢してて、主」
主に言い聞かせ、主は顔を隠しながら頷いた。体勢の所為でもあるのだ。

「了解したよ」

ベルモットは通信を切り、路地裏を歩いていく。すると、燭台切光忠と藤宮琉奈の姿を見つける。
「見つけたよ、藤宮琉奈」
壁に寄りかかってこちらを見ている。燭台切光忠は主を守るように前へ歩み出た。
「主、知り合いかい？」
燭台切光忠に聞かれ、どう返答すればいいのか分からなかった。肯定したら何か言われるではないかと考えてしまう。
「命令は確かなものでね、遂行しないと行けないの。邪魔するなら容赦はしないよ？」
不適な笑みを浮かべてベルモットは近付いてくる。
刀を抜いて、燭台切光忠は警戒心を一層強めて主を守ることに集中。私はどうすればいいのか思った。

ドドドド……！

誰かがこちらへ走ってきている。振り返ると、へし切長谷部がやって来た。
(ちょっ…長谷部くん？！)
燭台切光忠は驚きを隠せなかった。
「主をお守りするのが仕事ですから、来ちゃいました！」
呆れたように燭台切光忠はへし切長谷部を見ている。

「次から次へと……やって来るわね。本当に面倒だけど、命令なんだからね」

銃を向けられてへし切長谷部は何事かと思い、燭台切光忠に聞く。これまでの経緯を聞かされると、主を守る体勢へと変える。
「主は先へ逃げて下さい！」
へし切長谷部に言われて、主は走ってその場から逃げた。

「はぁっ……はぁ……っ！」
息を切らして米花町の大通りに出た。車が多く通っており、青信号になるのはまだだ。
「あ、この間のお姉さんだ！」
光彦が言うと、歩美と元太は叫んだ。学校帰りなのだろうかランドセルを背負っている。
「どうしたんですか？」
光彦に聞かれ、どう言えばいいのか迷ってしまった。あまり言いたくないのだ。
「俺たち力になるぜ！」
元太が言うも藤宮琉奈は断ってその場から去っていった。
「何なんだよ…どうかしちまったのか？」
首を傾げながら元太は後ろ姿を見ていた。光彦も心配そうに「大丈夫でしょうか……」と呟く。

午後になり、辺りは暗くなっていた。現在の時刻は午後6時25分。住民たちはそろそろ夕食だろうか。
「どうしよう……私」