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「可愛い服も好きですよね。」
どきり、とした。たかだか数年、年を取ってるくらいで安心していたのかもしれない。或いは、勝手な憶測で見下していた、とか。ウォヌと話しているとなんとなく見透かされているような気がして落ち着かなくなる。単に寡黙なところがそうさせるのではない。周りを良く見ているということを知っているから。
「……俺は、Aヒョンがどうしようとしてるのか、知ってますよ。」
「逃げるなって?」
「違っ……」
強い言葉で返されて当惑したんだろう、ウォヌが言葉に詰まった。責められるんじゃないか、とウォヌの身構える姿が目に映ってしまって自分の醜さをありありと見せつけられた気になった。
ああ、もうだめかもしれない。多分だめだ。
勝手に余裕が無くして、誰かにキツい言葉を投げつけて、これが僕の本性なんだとしたら孟子も裸足で逃げ出すに決まってる。性善説なんて無いように見えた。
きっと混沌の中から僕の存在を切り出すときに何処か間違えてしまったんだね。
「わかってるよ。」
言葉にため息が混じっていく。そうすると、詰まっていた息の所為で段々酸素が足りなくなって苦しくなっていく。言い訳すら出来ない人の感覚だった。
「似たようなこと言われたんだ。」
耳の底で鳴る拍動はとても速い。声は震えていなかっただろうか。僕の
「でも大丈夫。ありがとね。」
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作者名:或日々襾 | 作成日時:2023年2月17日 21時