お隣りさんちのヒョクチェくん

撮影中 ページ29

撮影は順調に進んでいく。

カメラが回ってからのAさんは、さすが、としか言いようがない。

トップモデルのオーラを、全身にまとって。
カメラマンの要求を瞬時に理解し、色々な表情を見せる。

さっき撮影前に挨拶した時は、全然笑わなかったのに。
今や、弾けるほどの笑みを浮かべて、僕を見つめる。


そんな彼女に、飲まれてしまいそうになるけれど。
なんとか堪えて、撮影を続けた。



休憩に入り、またさっきの無表情に戻った彼女。
人見知り、なんだろうか…？

けれど、彼女の言葉の端々に、周りを気遣う優しさが滲み出ていて。
きっと優しい方なのではないか、と思う。
僕から、話しかけてみようかな。


ｼｳｫﾝ『Aさん。お疲れ様です』

笑顔で声をかけた。

『…お疲れ様です、シウォンさん』

さっきまでの笑顔が嘘のように、固い表情を浮かべる彼女。


ｼｳｫﾝ『Aさんは、もしかして人見知りなんですか？』

『……はい。特に男性はちょっと。気後れしてしまって』

ｼｳｫﾝ『そうなんですか……』

あまり、触れられたくない部分かもしれないな。



ｼｳｫﾝ『でも、撮影中のAさんからはそんな様子が見受けられなかったので、僕が言うのも失礼ですが、さすがトップモデルだなって驚きました』

『…ありがとうございます。一応、モデルなので』


あ、ストレートに言い過ぎたかな。

怒っているのか照れているのか……
彼女の表情が読めない。

次に繋ぐ言葉が、思いつかないでいると。




『シウォナ！』

聞き覚えのある声に、名前を呼ばれた。

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