今と未来、僕と君 14 (ページ49)

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良太郎｢Aはいらない子なんかじゃない｣

良太郎｢僕はちゃんと覚えているけど…Aは忘れてる｣

昔のことを思い出す時

いつもAの隣にはある人がいた

Aはその人ととても仲が良く

いつも幸せそうだった

今思えばAの正義感の強い性格や腕っ節の強さは

全部この人の影響だったのかもしれない

良太郎｢Aはちゃんと愛されてたし、大事にされてた｣

良太郎｢覚えてないだけで家族と幸せそうに過ごしてた｣

今じゃ当たり前のように

子供っぽいリュウタロスの世話をしているが

昔はどちらかと言えばされる側だった

甘えん坊で、寂しがり屋で、ちょっとワガママで

きっと本来のAはそんな人なのだろう

記憶を失ったことが原因なのかはわからないが

Aは少しだけ変わった

ハナ｢じゃあつまりAちゃんは｣

ハナ｢家族に捨てられたんじゃなくて、家族との記憶を全部失くしてる…ってこと？｣

ハナがそう聞くとさっきのAと同じくらい

悲しそうな顔で頷く良太郎

良太郎もまた1番近くで見ていたからこそ

Aが全てを忘れたと知った時、悲しくてたまらなかった

何度も本当のことを教えようと思ったけれど

あの日、声を上げて泣き続けていたAのことを思い出してはなかなか言い出せず

良太郎｢でも確かに、今のAには家族はいない｣

リュウタロス｢どういうこと？｣

良太郎｢Aの家族はもう……誰も…｣

モモタロス｢マジかよ…｣

言葉を詰まらせる良太郎を見ては

何かを察したモモタロスたち

確かに家族はいたけれど、今はもういない

それが何を意味するかを理解するのに時間はかからなかった

良太郎｢Aは家族のことが本当に大好きだった｣

良太郎｢大好きだったから…忘れてしまったんだと思う｣

忘れたくて忘れたんじゃない

無意識に全てを忘れてしまうほど

いなくなったという現実を上手く受け止められなかった

A｢私の…家族｣

時間の中をゆっくりと歩き

白いパスを手に扉を開く

時計の針は少しづつ、記憶を刻んで─

A｢もしかして…あの人は…｣

誰かがAの背中を押した