今と未来、僕と君 14 (ページ38)

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また大事な人が自分の知らない間に消えてしまったら

そんな心配は幸運なことに杞憂に終わった

本当にどうしようもないくらい不安でいっぱいだったのだが

今でも変わらずAは隣にいる

ハナ｢悪い夢ばかり見て眠れないって言ってたよね｣

ウラタロス｢そうそう、あと頭が痛くなるとも言ってたよ｣

良太郎｢悪い夢？｣

ハナ｢ここ数日、ずっと頭が痛くなったり悪い夢を見たりでなかなか眠れなかったって言ってたのよ｣

良太郎｢……全然知らなかった｣

ハナ｢知らない男の人の夢と、今日は火事の夢を見たって｣

頭が痛いとか、悪い夢をよく見るとか

そんな話はAから一切聞かされていなかった

これまたAの性格がそうさせていたのかもしれない

良太郎と愛理にだけは心配をかけたくないという

Aなりの気遣い

ただその気遣いのおかげで色々知るのが遅くなってしまう

良太郎｢火事の夢？｣

ハナから話を聞いた途端

微かに表情を変えた良太郎

男の人の夢に、火事の夢、Aから話を聞かないことには

どんなものだったのか当然分からないのだが

男の人の夢ならともかく、火事の夢は何だか悪い予感がした

ハナ｢何か知ってるの？｣

良太郎｢いや、多分…偶然というか考えすぎかも｣

ハナ｢どういうこと？｣

良太郎｢そうじゃなきゃいいなっていうか…｣

Aが変な夢を見たり

身に覚えのない光景をまるで自分の記憶のように見るようになったのはつい最近の出来事

中でも今回の夢に出てきた知らない男の人は

しょっちゅう出てくるらしい

夢は夢でも、ただの夢ではないような気がする

そう言ってAは頭を抱え、酷く悩んでいたらしい

ハナ｢もしかしたら…記憶の核に何か関係するのかな｣

良太郎｢え？｣

ハナ｢本当に勘なんだけど、例えばAちゃんの中に忘れた記憶があってそれを思い出させるために…とか｣

良太郎｢忘れた記憶…｣

ハナ｢本当にただの勘だし、実際Aちゃんにそういう記憶があるのかわからないけど｣

良太郎｢………そういえばずっと思ってたけど｣

隣で静かに眠り続けるAに目を向ける

サラサラの髪の間から見える長いまつ毛に縁取られた目

良太郎｢Aが記憶の核であるのはわかるけど｣

良太郎｢記憶の核がどういうものなのか今でもよくわかってない気がする｣