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物心ついた時から自分はほかの人とは違うんだと自覚した
すれ違う人たちを見て疑いだったものが確信に変わった
自分には"家族"がいない
それどころか自分を産んだはずの母親の顔も知らない
父親はどんな人なのか、母親はどんな人なのか
みんなが当たり前のように知っていそうなことを知らなかった
A｢(私は違う、誰の家族でもない)｣
A｢(良太郎と姉さんは私のことを家族って言ってくれるけどきっとそれも違うから)｣
大事な人達は私のことを家族と呼んでくれた
でも、長い年月を重ねれば重ねるほど
幸せよりも申し訳なさが募っていくばかりで
自分は1人なんだという現実が
強く突きつけられている気がした
家族どころか身内のことも何も知らない
私は良太郎と姉さんに迎え入れられる前にはどこにいた？
誰と一緒にいた？
何も覚えてない、何も知らない、それが怖かった
A｢(嬉しいのに、幸せなのに、なんで)｣
A｢(何でこんなに寂しくて、悲しくて、辛いんだろう)｣
大好きな人が幸せをくれた
家族の代わりに抱えきれないほどのたくさんの幸せを。
優しくて、いつもどんな時でもそばにいてくる
昔も、今も、ずっと誰よりもそばで
A｢良太郎｣
子供みたいにたくさんたくさん泣いた
泣きたくないのに私の気持ちと反するようにどんどん溢れた
今まで閉じ込めていたものが一気に押し寄せたみたいに。
A｢良太郎はどこにも行かない？｣
どうしたらいいのかわからなかった
何が正解で、何が間違っているのかわからない
ただ分かるのは私は私が思うよりも強くない
強いって言葉はきっと彼のような人に使う言葉
守らなきゃって思ってた人に私は守られていたんだと
今更になって気づく
頬を濡らす涙がどんどん彼の肩を濡らしていく
良太郎｢行かないよ、一緒にいるよ、ずっと｣
A｢どうして？｣
良太郎｢…………僕が…そうしたいから｣
抱き寄せられた腕は誰よりも優しくて、暖かかった
さらに涙が止まらなくなった
寂しいも、悲しいも、嬉しいも、幸せも、全て混ざって
1つに溶けていくような、複雑な気持ちが大半を占める
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作者名：ぽちゃた | 作成日時：2022年4月6日 21時
