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第八話 味付き ページ8

「あれ?小鳥遊先生、どうなさったのですか?」

調理室への道を歩いていると前方から司が歩いてくる。

「昼食を厨房へ取りに行くのさ。勿論、星藍ちゃんの分もね」
「そうですか」

誰かに言って下されば持って行かせましたのに
と言う司の肩を叩き笑う小鳥遊。

「偶には私も歩かないとね……人の健康のことなんて言えなくなってしまうよ」
「そんな……年寄りみたりなこと言わないで下さいよ」
「実際そうなんだから仕方ないさ」

じゃあ
と手を振りながら厨房への歩みを進める小鳥遊に、夜は私が持っていきますよ。と声をかけるとありがとさんという返事が廊下に響きわたった。





「星藍ちゃんの居た所には、うどんっていう食べ物はあった?」
「?…………ない」
「そっか。じゃあ食べるのは初めてか」

熱いから気を付けて
と注意を促しながら、ベッド横のテーブルを星藍の手元まで近付ける。

「………おい、しい」

一口分の麺を口に入れ、咀嚼し、喉に通した星藍の顔は、驚いた様な顔をしていた。そんな星藍に小鳥遊は、満足気に頷き、自分の分にと持ってきたうどんを食べる。

「……味がある」
「味?」
「………味がついたもの、食べる機会があまりなくて」

いつもご飯に少しの味噌汁と漬物が3食提供されていたと付け加える星藍の顔は暗く沈んでいた。

「おかわり、持って来ようか?」
「………遠慮する」
「遠慮するのかい?いらないじゃなくて?」
「あぁ。いらないだ」

あっという間に食べ終わった星藍は、テーブルに置かれていた盆に器を置き、脚を曲げて小さく蹲る。

「………たかなしさん」
「ん?なんだい?」
「この傷はどのくらいで治る?」
「そうだね………切り傷と言えど、傷が深いのが多いからね」

2週間、3週間くらいかと指折り数える小鳥遊に星藍はそうかと短い返事をし、膝に顔を埋めた。

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作者名:梨央 | 作成日時:2018年4月15日 13時

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