214: 栄養［20161219up］ ページ4
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あの頃の俺は、長い1日を早くやり過ごそうと酒を煽り、
酔い潰れて眠りの中で辛い記憶が蘇ると飛び起きて、
夢の記憶を消すために、また酒を流し込む毎日だった。
望みはただひとつ、消えること。
何もしたくなかった。思考は停止していた。
後悔が重苦しく立ち塞がりそうになる度に、
酒に手を伸ばして現実から逃げていた。
今アイツを見かけたら、ぶん殴ってるな。
消えたいだって？
俺が消えたら両親はどれだけ苦しんだことか…。
智を必死に守っている今は、親の気持ちが判る。
こんなに愛しい、温かい、大切な命が消えるなんてダメだ。
この想いは、彼女を守れなかったことへの贖いなのかな…。
巻き戻せない『時』に、ただ遣り切れなさが募る。
智は仲間たちからたくさんの愛情を貰って栄養にしていたようだ。
キスをするのは俺と領だけ。…何となく。
栄養が足りなきゃ考えてもいいけどさ…。
『3歳児ってとこかな』
雅紀が智を見てそう言うと、領の表情が少し翳って見えた。
彼の予想よりも戻るのが遅いのかな…。
でも、怖くて確認は出来なかった。
最初の夜はロクに栄養をあげられなかったし、
この1週間の俺も、少し眠ってはハッとして起きる繰り返しで寝不足だ。
やっぱり充分な栄養を与えられていないのか…。
今は、智がほんの少しずつとはいえ成長しているのが嬉しいけれど。
俺は膝の上で目を瞑る天使を見下ろした。
軽く小首を傾げて翼をはためかせている。
…彼にとってキスは栄養だけど、こうやって待たれると戸惑うよね。
「…ふたりのときだけね？」
ああ、変質者かよ。
思わず額に手を置く俺に、智は目を閉じたままこくんと頷き、
さあ！と言わんばかりに口唇を突き出した。
栄養ね、栄養だから。
言い訳しながらも、それに癒される俺もどうよ…。
…ピンポーン…
「え？」
ぱたたた…、べちゃっ
ふいのチャイムに智が玄関に飛んで行き、すぐ床に落ちた。
「さとっ！」
慌てる俺をよそにむくりと起き上がった彼は、
危なっかしい足取りでよたよたと玄関に歩いて行った。
コンコン…
バンバン
チャイムに続く控えめなノックに、智は扉を叩いて応えていた。
今の彼には扉が開けられないんだな…。
智を抱きとめると、扉の前に立つ女性のぼやけた映像が送られてきた。
「んま」
んま？
って…。え…！
「さとちゃん？…潤くん？」
「…っ和子さん…！」
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のん(プロフ) - はじめまして。ここ数日でここまで読ませていただきました。お話も文章も、とても素敵で心に染み入ります。ご家族の事、ご心労絶えないとは思いますが、ゆっくりでも前を向けますように。mogさんも、潤くんも…。次の更新を心待ちにしています。 (2017年11月27日 13時) (
レス) id: 4c34de8b60 (このIDを非表示/違反報告)
mog(プロフ) - 豆しばさん» 豆しばさん、お返事遅くなりました。優しいお言葉嬉しいです。心から、ありがとうございますと言わせてくださいね。のびのび歌えるさと天使を私も待っています。頑張りますね！ (2017年2月17日 6時) (レス) id: 4a95c6ffde (このIDを非表示/違反報告)
豆しば(プロフ) - mogさん» mogさんお返事ありがとうございます。さと天使に歌わせてあげたい気持ちと、今は歌わないでと願う気持ちと入り乱れて、ふたりの気持ちを思うと切なくて。胸がぎゅうぎゅういってます。どんなにゆっくりでも、いつも楽しみにお話の続きを待っています(^-^) (2017年2月8日 23時) (レス) id: ee15ee3d5e (このIDを非表示/違反報告)
mog(プロフ) - 豆しばさん» 豆しばさんコメントありがとうございます！なかなか進まない物語なのでご心配をおかけしていますね。彼らに寄り添って見守って頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます！彼らの間の行き違いがどうなるか、今しばらくお待ちいただくようになります。がんばります！ (2017年2月8日 23時) (レス) id: 4a95c6ffde (このIDを非表示/違反報告)
豆しば(プロフ) - 天使は、じゅんくんは、どうなっちゃうんでしょう？ 心配でなりません。成瀬さんは助けに来てくれないかな？ ふたりまとめて、ぎゅっとしてくるないかな。とか、我が儘なことを思ってしまいます。心配なく、思いきり歌を唄えるようになりますように！ (2017年2月8日 17時) (レス) id: ee15ee3d5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mog
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mog
作成日時：2016年11月22日 17時
