君といた“冬”は【まふまふ】

冬の始まり……３ ページ3

「僕は相川 真冬(あいかわ まふゆ)です」


「私は柊 雪音(ひいらぎ ゆきね)です。さっきは、いきなり声をかけてしまって、本当にごめんなさい」



僕らは、公園に来ていた。

二人でブランコに座って、何となく自己紹介をする。




……まだ、迷ってる。


この人に、僕のことを話して良いのか。



本当に、信じて良いのか。




「迷ってますか？」


その時、僕の心を見透かしたように、彼女は言った。



「ですよね。……私も、そうでしたもん。
はは、初対面の女がいきなり何言ってんだって話ですよね。
でも……さっきも言いましたけど、私は、真冬さんの話、絶対に信じます」


同じことを何回も繰り返しているだけなのに。


でも、それで僕の心は決まった。



「歌い手、って知ってますか？」


「はい、知ってますけど……それが？」



それなら、


「まふまふ、は知ってますか？」



恐る恐る聞いた。




「はい、知ってます。まふまふさんの曲は大好きです。もちろん、歌声も」


目をキラキラさせながら、そう話す彼女を見て、
何だか嬉しくなると共に、悲しくもなった。


すると彼女は「でも、」とまた話し始めた。




「最近そのまふまふさんに、疑惑が上がってるんです。
他の歌い手さんの顔をネットに公開したってなってて……

まふまふさんは、そんなこと絶対にしない人です。

なのに、今までファンだ、ファンだ、って言ってた人のほとんどが、信じないんです。
信じられません。
私は、まふまふさんは絶対にそんなことしない人だって信じてます。
だって、今まで何度も、まふまふさんの曲に助けられて来ましたもん。

あんなに素敵な感情のこもった曲を作れる人が、
そんなことできるわけないんです！」




それを聞いて、またさっきの気持ちになる。



ギュッと胸が締め付けられて、苦しい。



「しかし、なぜいきなりまふまふさんの話を……？」



僕が自分の正体をバラしたら、どうなるんだろう。

それでも、彼女は、僕を信じてくれるのだろうか。

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