笑って笑って 13 ページ13
早鐘を打つ鼓動を抑えようと、何度も大きく息を吐く。
落ち着くまで彼らは根気よく待ってくれた。
身体の震えが治まった頃にペンギンさんの気配が遠のいて、少し寂しくなる。
でもすぐに胡座を組んだペンギンさんの脚の中へと自分の身体が舞い戻り、背に触れるペンギンさんの温もりに安堵した。
それに習ってローさんも床に胡座をかいて座り、他のクルーたちもぞろぞろとみんな床に座った。
いつの間にかシャチさんもいる。
無事でよかった。
｢…妖精の涙という宝石をご存知ですか？｣
聞いたことあるなと、ローさんが言う。
ある一族の流した涙が宝石へと変わる。
その涙の宝石はクリスタルで、クリスタルの内部にルビーやらサファイヤやらエメラルドなどが入っており、珍しい二重構造の宝石は高値で取引がされると。
とても質のいい物だと、一粒一千万ベリーにもなるんだとか。
｢その一族が、お前なのか？｣
｢はい。幼い頃に人攫いにあい、色んな船を転々としてきました…｣
殴られたり、刃物で切り裂かれたり、痛みによって流れた涙では宝石にはならない。
そう言えば、ペンギンさんがそっと頭を撫でてくれる。
ローさんは大きなため息をついて、頭をガシガシと掻いた。
｢おれたちは絶対にお前を殴ったりしない。だから船を降りようとするな。いいな、ベルーガ｣
そう言って、食堂に落としてきてしまった帽子をベポちゃんが持っていて、その帽子を取ってまた頭へと被せてくれた。
｢返事は｣
｢あ、アイアイ…キャプテン｣
そっと手を取られて、手のひらにころりと宝石が落とされる。
首を傾げていれば、お前のものなんだからお前が持っておくべきだろうと言われた。
引っ込んでいく手を捕まえて、その手にころりと宝石を転がし返す。
この船に連れてきてくれてお世話になるお礼だと言えば、きゅっと眉間に皺がよる。
宝石の乗った手が握り込まれ、預かっておくとローさんは言った。
今日はもう解散だといって帽子をぽんぽん叩いてローさんは船内へと戻っていく。
今夜は一緒のベッドで寝ましょうねとイッカクさんに手を引かれた。
その後ろからペンギンさんや他のクルーの人たちもぞろぞろと着いてくる。
自分の話を聞いても誰も何も言わない。
逆に、ビックリしたよと、出ていかないでよと声を掛けてくれる。
本当、とても温かな船だ。
でも、無償の優しさがなんだか怖くもあった…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 671人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もふもふ子(プロフ) - あっくすさん» はい、そうです！せっかく頑張って書いた文章が突然パーン！と消えてしまっては悲しいので、あちらにも掲載して避難させてもらってます。パクリなどではございませんので、ご安心くださいませ。 (2022年12月4日 23時) (
レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
あっくす(プロフ) - コメント失礼します！pixivの方で同じ内容の小説を拝見したのですが製作者は同じ方ですか？ (2022年12月4日 21時) (レス) @page1 id: 074a6f3059 (このIDを非表示/違反報告)
となりの渉。(プロフ) - もふもふ子さん» ﾜｧ...長文感想ありがとうございます！！！イラスト気に入ってもらえてよかったです(*^^*)ベルーガちゃんの新しい情報（？）とか出たらまたFAイラスト描かせていただきますね！！！ヾ(*´∀｀*)ﾉ゛ｷｬｯｷｬｯ (2022年11月28日 4時) (レス) id: 8e6d99468c (このIDを非表示/違反報告)
もふもふ子(プロフ) - となりの渉。さん» 私が被りたいくらい…。欲しい…。本当に素敵なイラストをありがとうございました！まだこちらも随時更新していく予定です。ぜひ更新した際は読みに来ていただけると嬉しいです♪ (2022年11月28日 2時) (レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
もふもふ子(プロフ) - となりの渉。さん» 文字数足りない…。しかもハートの海賊団に入る前のベルーガちゃんまで！ボロボロ…痛々しい…。とても素敵な絵をありがとうございます！自分の書いたお話の夢主さんがイラストになるだなんて嬉しすぎます(*´艸`)あと帽子ですよ帽子！なんだあの可愛い帽子はっ！！ (2022年11月28日 2時) (レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もふもふ子 | 作成日時：2022年10月14日 3時
