雛鳥の足跡…57こ ページ10
綺麗な光景に吸い込まれるように、砂浜へ靴を脱ぎ捨て海水に足を浸す。
ひたひたと腰が浸かるくらいまで歩みを進め、そこから夕陽をじっと見つめた。
自身の世界で襲撃にあい、ゆらゆらと燃え盛る街はこのように赤かった。
でも同じように赤いここは、きらきらと輝き美しい。
その雲泥の差に、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。
一瞬にして、とても大事だった、大好きだった家族たちを失ってしまった。
でも、絶望に蝕まれていた心を、とても温かな船の者たちにすくい上げてもらった。
弱っていた時、とても美味しいご飯を完食しただけで、全部食えたのか、よかった！と笑ってくれた人。
あれがいいこっちがいいと争いながらも、服を貸してくれたりなど身綺麗にしてくれた人たち。
船内を散歩すれば、優しく声を掛けてくれた人たち。
いつもそばにいて、見守ってくれて、触れる手に何度も、助けてくれた人。
他にも、色々と…。
すぐにストンと、心の中に入ってきた。
とても大事で、守りたい人たちとなるのに全く時間は掛からなかった。
そして、大事な船(家)に、娘だと言ってその中に迎え入れてくれたとても身体も心も大きな存在。
とても、嬉しかった。
そんなことを思い返しながら、黄昏れる。
ここからまた、始めていくのだ…。
ちゃぷりと音を立て水中から手を出し、ピアスとブレスレットを一つずつ外して手のひらの上に乗せ、それに優しく口付けを落とし、そっと水中へと解き放った。
次に護身用にともらい腰に下げていた短剣を手に取り、風に靡く自慢だった長い髪を一つに纏め、それを首の後ろ辺りで、ザクリと…切り落とした。
｢っA！！！｣
その時とても耳に馴染んだ声が聞こえ振り向けば、ザブザブと水を掻き分けこちらに向かってくるマルコがいた。
｢ま、マルコさん！水に浸かっちゃったら身体が！｣
｢全身浸からなければまだ動けるよい｣
そう言ってグッと肩を掴まれる手は、少し弱々しい。
｢お前、何やってんだ。ピアスとブレスレットもどうした｣
ずっとそばにいてAのことをよく見てきたマルコは、変化にすぐに気付いた。
それがAにとって、とても大事な物であったことを知っている。
片方ずつ無くなったピアスとブレスレットがあった部分を見遣り、それもどうしたと手に持つ短剣と切り落とされた髪を見て問いかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 844人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もふもふ子(プロフ) - ミクリさん» いえ、とんでもない！くっつく時を楽しみにしててください(*^^*) 本当に！マルコさんはどんなデートをしてくれるんでしょうかね。しっかりと計画する派か、その時の気分で行く所を決める派か…うん、マルコならどっちでもよい(*´艸`) (2023年3月1日 14時) (
レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
ミクリ - もふもふ子さん» ちゃんとした恋人になるストーリーは決まってたんですね！失礼いたしました（汗その時が楽しみです♪マルコとデート本当にしてみたい…ｗ (2023年2月28日 18時) (レス) id: dfbdb02535 (このIDを非表示/違反報告)
もふもふ子(プロフ) - ミクリさん» もう恋人のような関係ですが、本当に恋人になるタイミングは一応考えてあるんです〜( ^ω^)デートですねっ。じゃあ考えていたお話にプラスして考えてみます(˶'ᵕ'˶ )︎ (2023年2月28日 7時) (レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
ミクリ - もふもふ子さん» クリスマスと内容が被ってしまうのでしたらいっその事どこかの島でバレンタインデートしちゃってください！！ｗなんならその番外編デートで恋人になっちゃっても良いですよ(/ω＼)既に恋人のようないちゃラブ具合ですが…ｗ (2023年2月26日 18時) (レス) id: dfbdb02535 (このIDを非表示/違反報告)
もふもふ子(プロフ) - いつもコメント下さりありがとうございます！番外編ばかりで申し訳ないです。バレンタインのお話はクリスマスに書いたお話と似てるな…と思ってやめちゃったんです( ᐛ )似ててもいい！ともし需要がおありでしたら、大遅刻ですが書かせて頂きます(*^^*) (2023年2月24日 20時) (レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もふもふ子 | 作成日時：2022年9月27日 23時
