雛鳥の足跡…4つ ページ4
「お前、名は?」
「Aというそうだよい」
喋るのをナースに禁止されているとマルコが言えば、そうかと頷いた。
「A、お前は息子を救ってくれた恩人だァ。おれの大事な客人としてこの船に迎え入れよう」
まずはしっかりと怪我を治すといい…そう言ってグララと笑う。
丁重にもてなすよう皆に言っておけとマルコに指示をした。
熱もまだあるようだ、喋れるようになったらまた話そうと、今日はその場を後にする。
マルコに抱き上げられている肩越しから大きなその人を見つめれば、圧倒される気配の中に優しさが滲んでいるのがわかる。
にこりと微笑めば、マルコの同様にやりという効果音が似合う顔で微笑まれた。
「さっきの親父はこの船の船長、エドワード・ニューゲートだ。通称白ひげ。この船の船員はあの人を親父と呼び、おれ達はみなあの人の息子なのさ」
外へ出れば、マルコがそう言った。
その瞳はとても柔らかい色を宿していた。
ぐるりと見渡してみた船は、とても大きい。
「ちなみにこの船は海賊船で、船員は1600人ほどいる」
くらり…と目眩がした。
海賊船?ほかの船や街を襲うという、あの?
隊長と呼ばれていたのでてっきり軍隊かと…。
マルコやこの船の船長や優しくしてくれたナースをみれば、そんな人達とは到底思えなかった。
あぁでも、にやりという効果音の笑みは、納得出来るかもしれない…。
甲板がよく見渡せる位置に来れば、なんだなんだと視線が集まり少し意心地が悪い。
身動げば、優しく腕を叩いてくれた。
「おい、テメェらよく聞け!コイツは親父の大事な客人で、おれの命の恩人だ!丁重にもてなせよ。少しでも変なことしてみろ、その時は…わかってんだろうなァ」
大声で言い放ち凄む顔は、確かに海賊らしいかもしれない。
了解!!と湧く大音量の声に、懐かしさを感じる。
つい先日までは、自分もこういう立場にいたのだ。
無惨にも殺されていった部下たちの姿を思い出し、身震いする。
それを冷えたか?と言ったマルコに、船医室へとまた運んでもらった。
おかえりと迎えてくれたナースの指示のもと、ベッドへと降ろされる。
「さっきよりも熱が上がったわね。少し休みなさいな」
確かに頭がぼぅっとする。
何かあったらこれを鳴らしてと、枕元にベルを置いてくれた。
「また様子を見に来る。ゆっくり休みなよい」
そういって頭を撫でてくれたマルコは、シャッとカーテンを閉めて出ていった。
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もふもふ子(プロフ) - 如月さん» ありがとうございます(*ˊ˘ˋ*) (2022年10月6日 22時) (レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - もふもふ子さん» かわいいから問題無しです!! (2022年10月6日 19時) (レス) id: 4efb850e8a (このIDを非表示/違反報告)
もふもふ子(プロフ) - 如月さん» 幼女な夢主さんが好きで来られた方々には紛らわしい題名ですよね…申し訳ないです… (2022年10月6日 13時) (レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - 雛鳥って書いてあるから子供かな?って思ったけど成人してたわ (2022年10月6日 12時) (レス) @page7 id: 4efb850e8a (このIDを非表示/違反報告)
もふもふ子(プロフ) - thmrt1214さん» ありがとうございます!このお話でマルコさんをもっと好きになって頂けて大変光栄です!続編は大人のお話を入れ込んでいきますので、未成年の方は閲覧できないように設定している、ということでごさいます。 (2022年9月27日 23時) (レス) id: 3d96900827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年9月17日 4時