出会いは1冊の本より 6 ページ6
「…ぼ、僕…?」
「…わ、私…?」
足下にいた者と、頭上にいた者が数秒見つめ合い同時に言葉を発した。
頭上にいた者…アレンは戸惑う。
足下にいた者は、自分と同じ歳くらいの少女であった。
髪の上部はアレンと同じくらいの長さだが、下部は肩甲骨あたりまでありそうなストレートウルフ。
キラキラと輝く綺麗な金髪だった。
こちらを見つめる大きな瞳は翠色であり、宝石で言うならばペリドットのよう。
その宝石が[森の妖精]と例えられているのと同じように、彼女は見目麗しかった。
色彩は全く異なるというのに、何故か…何故だかその顔はアレン自身が自分だと思うようにそっくりなのだ。
足下の彼女も同じように思っているのかはわからないが、唖然とこちらを見つめている。
なぜ急に彼女が現れたのか分からないしどうすればいいかも分からないが、この薄ら寒い板張りの床にずっと座ったままでは可哀想だ。
彼女の身なりは肩がむき出しの、薄い白いワンピース1枚だけ。
このままでは身体が冷えてしまうと気遣い、アレンはそっと身をかがめ右手を彼女に差し出した。
「あの…僕、アレン・ウォーカーと言います」
「あ…えっと、私はA。A・フェニーチェです」
差し出した手にAだと名を告げた彼女がおずおずと手を重ねる。
その手を軽く握りそっと引っ張り上げ立たせたあと、むき出しの白い肩へと自身が着ていたジャケットを掛けてあげた。
ありがとうと小さくお礼を言い、桜色に頬を染めはにかんだ彼女はとても愛らしい。
いいえ、とそんな彼女にアレンは微笑み返す。
その様子を傍から見れば、二人は一枚の絵のようだ。
Aの黄金の髪と、白髪だがランプに照らされると銀色のように見えるアレンの髪が揺れ煌めきとても美しい。
どちらもなにを言っていいのか分からずまたしばらく見つめ合うことになってしまったのだが、先にAが口を開いた。
「あの、ここは何処でしょう?確か私、自分の部屋にいたはずなんですけど…なぜかこんなところに…」
「え?えっとここはイギリスの…宿の中にある書庫で」
街の名前忘れちゃったんですけど…と申し訳なさそうに呟く。
「いぎりす…?いぎりすってどこ?」
「へ?イギリスを知らない?」
「はい…」
「えー…えっと、君はどこの国の人?アメリカ?フランス?イタリア?」
誰でも知っているような国を挙げたアレンだが、Aはあめりか…ふらんす…いたりあ…と呟き、まるで分からないというようにこちらを見ていた。
32人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年8月7日 21時