僕は…君に… 【D.Gray-man】 (ページ47)

今日:5 hit、昨日:29 hit、合計:11,706 hit

彼と彼女の平穏な一日 7 ページ47

Aの本は表紙の装飾などが綺麗でずっと手に持ってると盗まれかねないので、途中で調度いいサイズの皮のショルダーバッグを見付け購入した。
それを嬉しそうにぽんぽんと叩きながら彼女は歩く。

夕食も街のレストランで済ませ、宿へと戻る。
…お決まりの迷子は、言わなくても分かるだろう。
アレンは受付のカウンターで何かを話し、鍵を交換して戻ってきた。
部屋を替えてもらったらしく、入った部屋にはベッドが二台並んでいた。
なんだかちょっとしょんぼりしているAにどうしたのか問いかけると、今日も一緒に寝れるのかなと思っていたと。
勘弁してもらいたい…。
本当は二部屋にしようとしたけど、この世界に来たばかりで一人にしてしまうのは心許ないなと思い同じ部屋にしたのだ。
それで譲歩してほしい。

先にシャワーを浴びさせてもらったAは、ベッドの上で抱え込んだ膝をぱたぱたと動かす。
そこにシャワーを終えたアレンが来て、動いているAの足へと目を留めた。

｢A、それ…｣
｢アレンとお揃いにしちゃった｣

そういってはにかむAの右足首には、アレンと同じデザインのミサンガが付けられていた。
アレンはしゃがみ込み、それをまじまじと見つめた。

｢赤は顔の紋様、金は髪、黄緑は瞳で黒は本、真ん中の金のビーズはソリタレオの黄金の鳥…かな｣
｢あ、わかった？｣

ふふっとAは笑う。
すっとミサンガを撫で、なにをお願いしたの？と問いかける。
するとAは頬を染め目を泳がした。

｢アレンと…ずっと一緒にいられますように…って｣

アレンと出会って、自分の世界に戻りたくないなぁって思っちゃった…とAは言い、立てた膝にぼふっと顔を埋めた。

…あぁ、なんて愛おしい人なんだ。
そっとミサンガの付いている足を取り、その指先へ口付ける…。

｢なっ、なんてことするのっ！？｣

ビックリして足を引っ込めるA。
顔を真っ赤にして身体をぷるぷる震わす。
すこし潤んだ瞳が可愛いと思った。
なにってAがよくするキスですよと、べっと舌を出して言ってやると、ぐっと喉を詰まらせAは黙り込む。
勝ったと思った。

向かいのベッドに座り、上機嫌でティムキャンピーを磨くアレン。
その勝ち誇ったような顔に、Aは恨めしそうな顔で睨んだ。
そんな彼女をちらりと盗み見て口元に笑みを浮かべる。

その願い、叶えてあげる。
だから彼女を…元の世界へと連れて帰らないで…。