彼と彼女の平穏な一日 5 ページ45
お昼はアレンが来た時と同じように、露店を巡る。
二人は今はぐるぐる巻きになった大きなソーセージにかぶりついている。
齧る度に肉汁が溢れでて美味い。
最後に新鮮な搾りたてのオレンジジュースを飲めば、お腹いっぱいだ。
しばらく歩くと街の中央に来たのか、大きな噴水広場があった。
その周りでは絵を描く者、芸をし投げ銭を貰う物、露店を出す者で賑わっている。
ある一角では吟遊詩人の音楽に合わせ、沢山の人がくるくる踊っている。
「アレン行こう!」
「うわっ」
そういってAはアレンの手を引っ掴み、その中へと混ざっていく。
とくに決まった踊り方はないので二人も両手を繋いで踊った。
ティムキャンピーもしっぽでアレンの腕に絡みつき一緒になって踊る。
ときには可愛いペアーね、なんてにこやかに冷やかしの声が掛かる。
途端にアレンは恥ずかしくなるが、Aはありがとう!と嬉しそうに笑った。
くるっと二人が回ったところで、はらりとAのフードが落ちた。
それに気付いた人たちがどよめきを上げる。
しまった…とアレンはAの手を引いて走り出し、バタバタと路地裏に逃げ込み物陰に彼女を抱き込んで息を潜める。
追いかけてきた足音が過ぎ去るのを待つ。
やはり、この似た顔を良く思わない人は多いのだ。
しんと静まった頃、アレンの胸に手をついていた彼女と目が合う。
なんだか可笑しくなってふはっと二人して笑った。
また広い通りへと出て少し休憩しようとAをベンチへと座らせ、アレンは飲み物を買いに行った。
ふとAは近くにあったキラキラ輝く露店が気になりそちらに足を向けた。
その間にアレンが帰ってきてはいけないと、ティムキャンピーにベンチで留守番を頼んだ。
色とりどりに煌めく中に自分たちみたい…と思う物を見つけ、二つ手に取り露店のおばあさんへと手渡した。
ポケットから綺麗な花柄が刺繍されているポーチを取り出し、そこから代金を支払う。
必要の無くなった師匠の愛人のコートを売り払い、何かあった時に使って下さいとアレンから頂いたこちらの通貨だ。
簡易に包んでもらった物を受け取り、ティムキャンピーが待っているベンチへと戻った。
すでにアレンは戻ってきていた。
連れ去られちゃったのかと思ってビックリしちゃいました…と、そう困り顔で笑われる。
ティムがじっとしてたので大丈夫かなと待っていたそうだ。
申し訳ない…。
一息つこうとベンチに並んで座る。
たくさん歩いた足が、じんわりとした。
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作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年8月7日 21時