彼と彼女の平穏な一日 4 ページ44
まず外に出るにはどうしようとアレンはがさごそとトランクの中を漁る。
自身も細身とはいえ、身長差がある。
自分の服では大きいだろうけれど仕方がない。
ふと、いい物を見つけた。
ちょいちょいとAを手招きしてそれをすっぽりと被せてやる。
薄手のポンチョコートだった。
これならそのまま下が薄いワンピースでも大丈夫そうだ。
「師匠の愛人さんの忘れ物なんです。質がいいので路銀に困ったら売ろうかと思って持ってきてたんですよ」
背の高い人だったから少し大きいけれど、目の下まで隠れるフードが良く似た顔を隠すのに調度いい。
靴は大きいけれど、薄いルームシューズなんかで街を歩かすわけにはいかない。
少し布を詰めて買うまでの我慢だ。
よし、街へ行こう!
視界が悪くよたよた歩くAの手を取り歩く。
何件かショーウィンドウ越しに見て、一番Aに似合いそうな洋服店に入った。
アレンがとても張り切ってあれもこれもと手に取る。
多すぎる。丁重にお断りした。
「私に一番似合う物をお願いね」
そう言えばとても真剣に悩んでくれるアレンの横顔を盗み見て、ふふっとAは笑顔になった。
Aも店内を見ていると、ある物に目を奪われる。
じっと見ていたらアレンに手招きされた。
どうやらコーディネートが完成したようだ。
白のミモレ丈スカートにフリルをあしらったブラウス。
後ろが編み上げになったダークブラウンのホルターネックベスト。
足元はベストと同色のシンプルなヒールブーツ。
そして最後に深い赤のポンチョコートを被せれば…。
「うん、可愛い!良く似合うよ」
そう言ってアレンは満足そうに笑った。
ティムキャンピーもポンチョのフードへと降りたちパタパタと羽を揺らす。
そしてお店を出たあと、すぐ側にあったベンチへと座らされる。
首を傾げていると一瞬首の後ろへと手がまわり、ブラウスの襟元でそれはシュルりと結ばれた。
「アレン、これ…」
それはさっきAが店内でじっと見ていたものだった。
「気になっていたんでしょう?」
そういって笑いかけてくれた。
じっと見ていたのを見られていたのだと思うと恥ずかしいが、嬉しかった。
アレンとお揃いっ!
そういって微笑めば、顔以外まで似せてどうするんですか…と呆れられたけど、片手で押えてる顔は赤かった。
それはストライプ柄の赤いスカーフタイだった。
ありがとうアレンとそう言えば、どういたしましてと返ってくる。
そして二人はまた手を取り街の散策へ…。
32人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年8月7日 21時