僕は…君に… 【D.Gray-man】 (ページ37)

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彼女の世界と力と哀しみと 10 ページ37

｢悪事は必ずばれるのよ…。幼いながらに、清々したわ｣

そう言ってAは嘲笑った。
ふうっと息を吐き、アレンの肩口に額をぐりぐりと押し付ける。
アレンもAの頭にそっと額を寄せた。

それからは平穏に過ごせた。
祖母は祖父が捉えられスッキリしたと笑った。
でも陰で一度泣いていたのを知っている。
当然だ。自身の息子を殺されたのだ。
自分の手で罰を与えたかっただろう。
それでもAの前でそういう素振りを見せなかった祖母は、とても強かだった。

祖母には沢山支えてもらった。
まだ幼かったから国内だけしか討伐に行くのを祖母は許してくれなかった。
心配してくれたのだ。まだ力を操り慣れていなくてよく怪我をして帰った。
それでも何も言わず手当をしてくれ、頭を撫でてくれた。
どんなに遅くなって帰ろうとも祖母は起きて待っていて、お帰りと言ってくれる。
討伐に行く時も必ず行ってらっしゃいと言ってくれた。
そんな祖母にAは、討伐の帰りに美味しいものを買って帰ってあげることぐらいしか出来なかった。

12歳になった頃その平穏な暮らしは突然崩れ去る。
国の端の方まで討伐に向かい、キメラを葬るのに時間が掛かり夜中となった。
最終列車に乗れそうだったがその日はもうなんだか動きたくなくて、その街に留まると祖母に連絡を入れた。
いつもなら、乗って帰ってたのに…。

討伐の帰りは毎回祖母に連絡入れているのだが、その日はなぜかいつもと様子が違った。
怪我はないかと、帰りを待ってると電話口に聞こえる。
いつもならそれだけで終わりだった。
でもその日は違った。
少し間をあけて、笑顔の可愛いAが好きだと、いつも元気で頑張るAが好きだと、討伐が上手くいかなくて落ち込むAが愛しいと。
母に似て綺麗で今から心配だと変なことも言う。
いつもそんなことは言葉にせず、撫でくれたり抱きしめたりする祖母。
愛してるよ、ゆっくり帰っておいでといって電話が切れた。

何かおかしいと思った。
なんだか胸騒ぎがして列車に乗ろうとしたけど、もう最終列車は出てしまっていた。
結局その日は眠る事などできず、始発の列車に乗り込み家へと帰った。

ドアを開けると、いつも出迎えてくれる祖母がいない。
おかしい。
変な汗が出て、不安に駆られ心臓が脈打つ。
寝室を覗くと祖母はまだ寝ていた。
帰ったよと言おうと…起こそうと揺すった祖母の身体はーーーーー。