彼女の世界と力と哀しみと 3 ページ30
「リブロ・ディ・マジーア、グラツィエ(本よありがとう)」
彼女が本の発動を解くと、胸元の花模様に元の大きさに戻った黄金の鳥が戻ってきた。
ピタリとAの肌と一体化し、最後に花模様は消えた。
「力があっても、いい事だらけではないのよ」
そう哀しみを含んだ顔でAは笑う。
ぼうっと彼女を見つめていて気付くのが遅れた。
Aに両手で左手を引き寄せられ、あっ…と思った頃にはぴたりと彼女の肌に…胸元の力に寄生された部分に、僕の対アクマ武器が寄生された手が重なった。
彼女にその上を両手でぐっと握りこまれる。
「ちょ…っと、A!何してるんですか!」
顔を真っ赤にし、抗議の声を上げる。
ビックリして振りほどいてしまいそうだったけど、そんな乱暴なことは出来なくて留まった。
内心でひいひい言いながらAが動くのを待つが、一言も発さないし
ずっと俯いたままで目が合わない。
押さえられている手が少し、震えていたので…目下にある頭をそっと撫でてみた。
のろのろと顔が上がる。不安いっぱい…という感じで、目が少し潤みをもっている。
「…ごめんね、嫌がることしちゃって」
「とんでもないです。どうしたんですか?」
できる限りの柔らかい声色で問いかけてみた。
「ごめんね、勝手に見せて触らせて。女がこんな傷…汚いと思わない…?」
なんで…と思う。
僕が自分の左腕をことを似たように言ったら、なんでそんなこと言うのと怒ってくれた。
僕だって、絶対に汚いだなんてそんなふうに思わない。
しかしこの傷はどうして出来たのだろう。
まるで、黄金の鳥を取り出そうとしたような…。
ソリタレオは生命を真っ当するまで何をしても離れないと言った。
…彼女は自分で試してみたのだろうか。
アレンは無意識にまだAの胸元に触れている手で、痛々しい傷をそっと撫でた。
ぴくりとAが身じろぎ、そこで我に返った。
なんってことをしたんだ!!アレンの顔色は、赤や青にころころ変わる。
勢いよく手を引っ込めてしまいたいがぐっと我慢して、左手に被さってるAの手をもう片方の手で指一本一本優しく解き、そっと引き抜いた。
その時のAの目は、絶望を含んだ色になった。
こんな状況で不謹慎だとは思うけど、可愛いな…なんて思ってしまった。
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作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年8月7日 21時