彼女の世界と力と哀しみと 2 ページ28
力を受け継いだ者は、自らの生命を真っ当するまでその使命から逃れられない。
キメラを葬りされる力はやはり優遇されるので、それを吉と捉える者が大半だが逆も然り、責任が重荷となり凶と捉える者もいる。
「これを見て」
そう言ってAはワンピースの細い肩紐をずらし、がばりと胸元を露にした。
アレンはうわぁぁ!!と悲鳴を上げ立ち上がり、止めようと手を伸ばしたがある一点を見てピタリと止まる。
まだ発展途上でありそうなふっくらとした二つの膨らみの中心。
そこには5cmほどのAの大事な本の表紙と同じ黄金の鳥が描かれており、その周りの皮膚はいくつもの切り傷や焼かれたような、抉られたような傷で引き攣っていた。
アレンがそこに見入っていると、伸ばしたままの手が捕まれAの胸元へと導かれた。
ひぃ!と情けない悲鳴を上げ目をつぶり、なんとか触れまいと曲げた指先にかつりと硬いものが触れる。
えっと思い目を開けて見える胸元の黄金の鳥は、タトゥーのように描かれたものではなく…硬い金属のようなものだった。
「これが私のソリタレオ。本と対なの。力を受け継いだ者は身体のどこかに…その力に寄生される」
寄生したソリタレオは、先ほど言ったように生命を真っ当するまで何をどうしても離れてはくれないのだという。
ぱっとアレンの手を離し、側に置いてあった本を手に取る。
「どうか私に力を。リブロ・ディ・マジーア、アプリーレ(本よ開け)」
本を発動させると同時に胸元の黄金の鳥が浮かび上がり、先ほど書庫で見せた杖へと変化する。
「…そこから、出てきてたんですね」
そう言ってAの手にある杖を見たあと、やましい気持ちはないがAの胸元へ視線を向ける。
黄金の鳥が抜けたそこには花模様が浮かび上がっていた。
そして今度はAの顔へと視線を向け、書庫で見たその紋様にそっと手を這わした。
擽ったさにAは肩をすぼめる。
「書庫で初めて見たとき、気になったんです」
あぁと彼女は納得して、頬にあるアレンの手に自分の手を重ねた。
「マニーヴルユマン(操り人)達はソリタレオを発動させると、こうやって身体のどこかに紋様が浮かび上がるの」
赤色だしアレンのペンタクルに似てるよね、お揃いだと言われた。
自身の呪いはそんなものじゃないが、彼女のそれはとても綺麗である。
でも確かにそんな紋様が浮かび上がれば、同じ顔がとことん自分に似てるなと思った。
※ここまでお読み頂きありがとうございます※→←彼女の世界と力と哀しみと
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作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年8月7日 21時