僕は…君に… 【D.Gray-man】 (ページ26)

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出会いは1冊の本より 23 ページ26

まだ冷めやらぬ頬の熱を紛らわすよう、見上げた掛け時計は午前0時を少しまわっていた。
そっとティムキャンピーを手にすくい、その上でティムがぴょこぴょこ飛び跳ねる。
なんて可愛い生き物？なんだろう。
とても癒され、ふっと力を抜きソファの背もたれへと身を沈めた。

カチャカチャと紅茶を入れる準備をしてるアレンを盗み見る。
同じ顔なんだけど、私よりも背があって手も大きくて、華奢だけど男の子だった。
すっぽりと抱きしめられていたときの感覚が蘇って、ひとりでに顔が熱を持った。
とても温かかったなと思う。

なぜ私はこの世界に来たのだろう。
私は向こうの世界でアレンと同じように、途中で独り身となった。
ちょっと困惑しちゃうほどの手厚い紳士ぶりだけど、久しぶりに人の優しさと温かさを味わった。

帰りたくないな…なんて思ってしまう。
彼は私が帰ってしまうまで隣を歩いて欲しいと願ってくれた。
嬉しかった。私もそれを望んだ。
帰るまでじゃなくてできればずっと、私はアレンの隣にいたいなと思った。
出会って数時間しか経っていないというのに、不思議だ。
どのようにして戻るのかはわからない。
できるだけ長く、一緒にいさせて欲しいと願う。
この世界へと私を連れてきた本を、そっと撫でた。

｢お待たせしました、どうぞ｣

しばらく思いにふけっていると、アレンが戻ってきた。
ことりとテーブルの上に置いてくれたカップから湯気が立ち、いい匂いが鼻をくすぐる。
パッとAの手からティムキャンピーが飛び立ち、ベッドに座ったアレンの頭の上に着地した。
しっぽがゆらゆらと揺れ、なんだか嬉しそうである。

少しの間お互いもくもくとお茶菓子を食べ紅茶を啜り、小腹を満たせ一息つく。
フィナンシェも美味しかったけど、クッキーもスコーンもその他どれを食べても美味しかった。
幸せだ。

｢A、眠くはありませんか？｣
｢うん、逆に目が冴えちゃってる｣
｢…じゃあ、君の事を聞いてもいい？｣

Aの世界はどんなものだったのか、どのように過ごしていたのか…君のことを教えてくださいと、アレンは言った。

｢うん、いいよ｣

そうだね、何から話そうか…と彼女は少し考え、ゆっくりと喋りだした。