出会いは1冊の本より 22 ページ25
そっと唇を離し、そこで我に返る。
なんてことをしたんだと急に恥ずかしくなり頬を染め、Aは誤魔化すようにはにかんだ。
何が起こったか分からないというようにポカンとしていたアレンはAと目が合うと、ボッと火がついたように顔を真っ赤にした。
「うっ…うわぁぁあ!!」
もの凄い勢いで肩を押し引き剥がされた。
あまりの勢いに後ろに逸れたAの首が、グギっと音を立てる。
「な、何してるんですか!?」
「何って…キス…?」
「っ、なんで!?」
「なんでって…えっと、私が落ち込んだり元気がなかったときに、おばあ様がよくしてくれたなぁと思って」
急にアレンにしてあげたくなっちゃった言うと、駄目です!女性がそんな気軽にキスをしてはいけません!!って怒られた。
気軽にしたつもりはないけど…いや、衝動的に身体が動いちゃったから…気軽っていうのかな…。
今後は絶対に駄目ですからね!めっ!て言ってちょっと混乱してきてるアレンに、わかったと頷いておいた。
「…でも、ありがとう。嬉しかった」
少しの間があって、そう言ってアレンは右手で私の左手を取り、その手の甲へと…そっと口付けた。
上目で見つめてくるアレンの綺麗な銀灰色の瞳に、どくりと胸が波打つ。
「っ!!なんで!?」
今度は私が真っ赤になる番だった。
まだ手を取られてるせいで、逃げれない。
恥ずかしくなってもう片方の手で口元を隠す。
気軽にキスをしてはいけないって、ついさっきアレンが言ったくせに!
「英国男性が女性に贈る手の甲へのキスは、挨拶ですよ。ありがとう…と感謝を込めました」
そう言って爽やかに微笑まれた。
素直に感情を出してねと言ったのは私だ。
でも、急に変わりすぎじゃないかしら。
いやこれも紳士の行動のひとつなの?…あぁ、わからない。
ぐるぐると考えを持って巡らせていると、ふふっと笑い声が聞こえた。
「困らせてごめんね。Aになら、自分を表に出せると思ったんだ」
そう言われてしまっては、なにも言えない。
すっとアレンが立ち上がり、まだ手が繋がったままだったので自然と私も立ち上がる。
またソファへと連れてきてくれた。私を座らせたあと落ちていたブランケットを拾ってパタパタと軽く叩き、膝へと掛けてくれる。
そこに今までじっとテーブルの上へにいたティムキャンピーが乗ってきた。
紅茶…冷めてしまいましたね、入れ直してきますとティーカップを持っていったアレンの後ろ姿は、どこまでも紳士だった。
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作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年8月7日 21時