出会いは1冊の本より 19 ページ21
「過酷な幼少期だったんだもの、そうせざるを得なかったんだなっていうのは…わかるよ」
一番嫌だと思ったのは昔のことだからもう気にしていないと、虐げられていた時のことをなんともないというようにヘラりと笑ったとき。
でも幼かった時のアレンはとても痛かったはず…苦しんだはず…しんどかったはず…。
だから今のアレンが本当に大丈夫だと思っていてそういって笑うのなら、痛かったと眉間にしわを刻み笑って欲しい。苦しかったと眉尻を下げて笑って欲しい。しんどかったと泣きそうに笑って欲しいなと思う。
「辛かったことを、なかったことにしないで…」
しんどいと伝えたときに、だから?などと言ってくるような人は自分にとって他人だ。
どうしたの?と親身になって話を聞いてくれる人がいたら、その人は自分の味方だ。
世界には沢山の人がいる。
感情を閉ざしたままでは、自分の味方すら見つけられないよ。
感情を隠すのは悪いことだとは言わない。時と場合によっては感情を押し殺さないといけないこともあるんだし。
まさか人に迷惑を掛けてしまうだなんて思ってる?
ダメダメ、アレン自身が一線を引いちゃうと他の人も一線を引くよ。
思いっきり迷惑を掛けてやればいいの。そうして側に残ってくれた人が味方だ。
感情を表に出すことは悪いことじゃない。
自身の気持ちを、素直に伝えて欲しい。
弱音を吐いたからといって歩みが止まるわけじゃない。
もう無理だと言って諦めてしまったらそこで足が止まる。
不安なら喚き散らせばいい。絶対誰かが、受け止めてくれる。
何かに悩んだとき、考えても考えても答えが出なくたって、諦めなければ足は遅くても進んでる。
ちょっと遠回りをしてるだけ。
その間にきっと答えが見つかる、誰かが見つけてくれる。
そしたら足取りは軽くなり、またどこまでも歩き続けれる。
「過酷な過去を話してくれて、こうしてずけずけとものを言う私はアレンの味方だ。だから隠さないで」
「…ッ」
アレンの喉奥が引き攣る。
「アレンの歩んでる道のすこし後ろに私を置いておいてよ。足が止まりそうになったとき、振り返って。そしたらそこに、私がいる。」
素直なアレンの感情のままに何があったか隠さず話してね。
絶対隠しちゃ嫌よ。
そして一緒に悩もうね。
そして一緒に一歩を踏み出そうね。
突然この世界にきていつ消えてしまうかもわからないけれど、それまではアレンの側にいさせてね。
そう言って微笑んだ彼女は、どんなものよりも美しかった。
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作者名:もふもふ子 | 作成日時:2022年8月7日 21時