絶対に推し変できなくなる小説【d!】

10.em ページ10

em「へ、？」


博識な彼でも首をかしげます。


でも文字から察したのか、すごく泣きそうな顔になります。





em「え、えぇ、私は、だ、大丈夫ですよ。」




途切れ途切れになりながらもしっかりと喋り、最後に微笑んでくれた彼は優しすぎます。






em「も、もういいですから、い、行ってください！」






懸命に絞り出した最後の言葉でしょう。




彼の優しさが今の貴女に染みます。





顔を覗けばとても辛そうです。


貴女の幸せを優先したがためでしょう。






貴女は彼に背を向けます。





最後まで優しい彼には尊敬しかありません。






人のことを第一に考えてくれる彼。






歩き出そうとしている足が動きません。





em「どう、したんですか？」






こんな状況にも関わらず心配してくれる彼。









ごめん。





その一言だけ呟きドアに手を掛けた時。









em「…っ！やっぱ、無理や…っ！」






彼が後ろから抱きついてきました。





em「俺には…っ、大好きなものを失うことなんて…っ、無理や…！！」








泣きそうな彼の声。



ごめん、私も大好き。





そう、彼に伝えました。




em「ほんま…？っ、よかったぁ…」





安心しきった彼の声。



よかった。


貴女も安心します。





だって、ここで振りきるなんて貴女にはできないでしょう？







em「もう、離さんから…。」




耳元で囁いた彼。




貴女を包み込んでいる腕は強く包み込んでいて、離してはくれなさそうです。







これじゃ、



推し変なんてできませんね。




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