初めから ページ9
ある日の真夜中、ふと目が覚めた。
どうして起きたのかは分からない。
なぜか胸騒ぎがした。
不安だった。
1人が嫌だったら、
誰かと一緒にいたかった。
部屋を出てダイニングへ。誰もいないだろうけど自分の部屋よりも安心できると思った。
何よりこんな真夜中に起こす方が迷惑だし…
(あれ、電気がついてる…)
だれか、いる？
一緒にいてくれる？
少しの期待を持って覗くと、そこには船長と数人の隊員。
「あいつを乗せてそろそろ5年、っすよ」
「あんな年で暗殺術が完璧ってこえぇよ」
「なんで船長乗せたんだよ」
「あいつ、あのガキに殺されたのに…くっ…」
「まぁ、思うところもあるだろう。
だが、これからグランドラインへ行く。
強い駒はあった方がいいだろ？
そのために珍しい悪魔の実を食べさせた。
海に嫌われるのは海に出る海賊には致命的…だが、駒として忠実に従えられればこれ以上ない武器だ！！
強い、偉いと褒めておけば自分から進んで敵へ突っ込んで行く。
こんな使いやすい駒、手放したくねぇだろ！！！」
「ははは！船長！わっるいっすねー！！」
「言われればそうだな！」
「初めからそうするつもりだったんだ！あのガキ、気づかなくて幸せそうな顔してやがるんだよ！思わず笑っちまったねww」
「なるほど！船長さすがっす！まぁ、あいつを殺したんだから当然の報いだろ！」
ゲラゲラと笑う声が木霊する。
頭が真っ白になった。
あぁ、愛じゃなかった
本心じゃなかった
必要とされてなかった
また、道具として見られた
…何かがすっと冷めたような気がした。
もう、どうでもいいような気がした
だったら、
バイバイ
視界の端に映る赤
私は船を漕ぎ始めた
「あーあ、また初めから、か。」
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作者名：(名前) | 作成日時：2021年2月23日 20時
