炭酸製自販機 (ページ17)

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当日、空港はいつも通りざわめいていたけど私にはしーんとしているように感じた。

今まで喧嘩を仕掛けていた相手に唐突なプレゼントをしてさようなら。

悲しい。

「あれ…A」

キャリーバッグをこいちゃんに預けて鮪が走ってきた。

「あの、鮪、これ」

慌ててこれだけはと箱を渡す。

一本とはいえ高いやつとかじゃない。

中学生が買うような普通のペンだ。

けど私は鮪には絶対これをあげたかった。

見た瞬間の気持ちが鮪に会ったときの気持ちと同じだったから。

「ありがとう、これなに？」

「内緒」

なんや、と笑う君の声が愛しい。

「俺はこれ。」

CDだった。

「俺も内緒な」

「わかった」

「じゃあ、ライブ来てな」

「うん」

ふわっとした匂いがする。

ちょっとの煙草とシャンプーの匂い。

鮪の匂い。抱きしめられた。きつく。

「ね、痛い」

「離れたくないなあ」

「うん、でっ」

でも離れても恋人でしょって言いかけて、キスされた。

「ありがとう、応援してくれて」

「頑張ってね。絶対売れるから」

またキスをして、握手した。

「鮪…じゃない俊寛。大好き。今までごめんね」

「謝ることしてへんよ」

「したよ、この前とか」

「…あぁ、急に泣いてたな。どしたんあれ」

「夢語ってたから羨ましかったの」

嘘。

本当は寂しかった。

置いていかれてる気になった。

だけどそんな事はなかった。

私を見てすぐ来てくれて置いてなんかなかった。

「そっか。…俺も、ごめん。迷惑かけたこともあったやろうけど。その、俺もA大好きやから」

微笑みあって目を合わせて、もう一回だけ抱き合った。