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「うわぁ...」
思わず眉をしかめる。ぎっしりと埋め尽くされた本の背表紙は全て、同じ題名が書かれてあった。なんだが気味の悪さを感じて棚から目を逸らし、手元の本と向き合う。
確かに見覚えのある表紙を捲ると、またしても見慣れた挿絵のページがあった。しかし、文章だけが見慣れない。
ーなぜこんなことになってしまったの
ーただ生きてただけなのに、どうしてこんな思いをしなければならないの
ー誰か助けて下さい、お願いです でなければ私は...
「うわ、最初からこれ?重すぎ。おもおもくんじゃん。」
いつの間にか覗き込んでいた渡辺がうげ、と舌を出した。
「しょっぴーも見たことないの?」
「ないね。こんだけキモかったら覚えてるだろ。涼太もないよね?」
「どれ?...確かにないね。俺が知ってるのはもっと子供向けだったよ。」
誰もが見た事のあるタイトルなのに内容だけが違う。謎の違和感に襲われながらも、これもバッグにしまう。そろそろ終わりかと本棚をもう一度一瞥した時...一番下に、1冊だけ違うタイトルの本があることに気がついた。
しゃがみこんだ目黒は1冊抜き取って埃を払う。随分昔の本なのか、日に焼けて色褪せた表紙が特徴的だった。周りの絵本とは違いタイトルだけが書いてある、まるで文庫本のような見た目だと感じる。
ー夢遊種...む、ゆう、しゅ?総合カルテ7巻。
ー聞いたことがない単語だ。カルテってことは、病気の1種のことか?
誰かが差し間違えたのだろうかと考えながら本を回して様子を見る。背表紙と裏表紙には何も記載されておらず、内部の者だけが理解できるような最小限の情報だった。
首を傾げながら表紙を捲ろうとした...その時。
微かに、靴音が聞こえた。
この時点で身を固めたのは扉に近い目黒ただ1人。
手を止めて扉を凝視しながら耳をすませていると、その靴音はどうやら階段を下っているようだった。咄嗟に「舘さん、しょっぴー」と声をかけて唇に人差し指をあてる。
カツン、カツンという音が徐々に近づく。階段を降りきって廊下を進む「誰か」は油断しているのか、何やら鼻唄を歌いながら歩いているようだった。
足音が止まったと思えば離れた場所から扉を開ける音が響く。すぐに閉じられたため、誰かが潜んでいないか確認をしているのだろう。隣の部屋の扉が開くと、一気に部屋を包んだ緊張感が気温を少し下げたような気がした。
ついにドアノブが捻られる。ゆっくりと開いた扉からは人を目視する前に...ナイフと血の紐が飛び出した。
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もえなっとう(プロフ) - 藤菜さん» こんばんは!いえいえ全然大丈夫ですよ!?いつもありがとうございます! (2021年1月28日 20時) (レス) id: 9d4a7bc2ed (このIDを非表示/違反報告)
藤菜(プロフ) - こんばんは!余計な事を言ってしまってすみませんでした!続きを楽しみに待ってます! (2021年1月28日 19時) (レス) id: f78a68b7f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もえなっとう | 作成日時:2021年1月28日 18時