1.◇Tale ページ40
「目黒?目黒どこ!」
「いるよ。」
「うわぁっ!!!」
ドタドタ走りながら名前を呼び、床の影からぬっと出てきた黒い頭に翔太は腰を抜かした。
「お前ビビらすなよ!!」
「しょっぴーが呼んだんじゃん...。」
「何騒いでんの。」
ツンとした声を発した宮舘は指先から伸びる血の糸で鍵穴を弄る。どうやらピッキングをしているようだが、本人曰く適当にいじって開くのを待っているだけらしい。雑な持久戦である。かといって鍵を探そうにも手がかりがないため、扉が開くまで他の2人が護衛に回っていた。
「アラート鳴ってからとりあえず逃げてきたけどさ...道あってんのかな?」
「あってるもなにも正しい道なんてないし、やっぱり手当り次第探すことになりそうだね。」
鍵穴がカチリと音を立てる。そのままの形で糸を捻るとゆっくりを扉が開いた。電気のつかないその部屋を小型のライトで照らすと、仰々しく並んだ本棚とそこに入り切らなかった本がどっさりと積まれていた。
警報機がついていないらしく、足を踏み入れても問題ないと判断した一行はそのまま調査を始める。
ぬるりと影から這い出た目黒は外の様子を伺ってから扉を閉め、1番近くに積み上げられた本の山に向かって屈む。右足が少し痛むような気がしたが、気付かないフリをした。
「29××年度研究結果、薬剤副反応資料...やべ、なんもわからん。」
「俺もわからない。」
「だろうよ。こんなん阿部ぐらいしかわかる人いねえし。」
お世辞にも頭の出来がいいとは言えない3人が集まってしまい資料の読解ができない。前に誰かが言った3人寄ればなんとやらという言葉も今の状況では何の役にも立たなかった。
渡辺はとりあえず今後使えるかもしれない、という理由で目の着いた本をぽいぽいボストンバッグへ突っ込んでいく。研究資料と書かれたものは多分いるから持っていく。博士の日記...は、見た限り女性研究員との愛の過程しか書かれてなくて反吐が出るが、重要なことが書いてあるかもしれないのでとりあえず持っていく。
同じようにしていた目黒が1棚の資料を少々拝借したところで次の棚を見やる。1冊抜き取った表紙には「花泥棒と神様」と書かれてある。...どこかで見た事のある題名だった。確か、まだサナトリウムに閉じ込められていた幼少期に部屋に乱雑に置かれていた絵本だったはず。
なんで絵本がこんなところに、と思いながら目線をあげると...
棚は全て、この絵本で埋め尽くされていた。
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もえなっとう(プロフ) - 藤菜さん» こんばんは!いえいえ全然大丈夫ですよ!?いつもありがとうございます! (2021年1月28日 20時) (レス) id: 9d4a7bc2ed (このIDを非表示/違反報告)
藤菜(プロフ) - こんばんは!余計な事を言ってしまってすみませんでした!続きを楽しみに待ってます! (2021年1月28日 19時) (レス) id: f78a68b7f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もえなっとう | 作成日時:2021年1月28日 18時