1. Abyss ページ23
「............ラ、ウール...」
全身の血がさっと下がる感覚がする。部屋に押し込まれ軍人が乱暴に扉の鍵を閉めても、高地はただ呆然と突っ立っているだけだった。
ラウールは長い手足を折り曲げて眠っていた。冷たい床に投げ出された左腕は青紫色に腫れ上がり、酷く膿んでいた。顔色は白く、長いまつ毛に覆われた丸い瞳は姿を見せない。
...なんだか、すごく嫌な予感がした。
「ラウール、ラウール聞こえる?起きて。」
脱力した男性の体は重い。それでも高地はラウールの上半身を支え、揺さぶり続ける。昨日と同じような行動と思えたが、額に流れる冷や汗が以前よりも緊迫した状態だということを示していた。
かなり強く揺さぶっても、頬を叩いても少年は目を覚まさない。孤独と不安に押し潰されそうで泣きたくなったが、今1番苦しんでいるのはラウールであると耐え続けた。
「....んん......」
すると呻き声がして、ラウールの瞼がぴくぴくと動く。やっと起きてくれた!と一瞬気持ちが明るくなるが...
うっすら開かれた彼の瞳は、墨のような黒で塗りつぶされていた。
「ラウール...?」
一旦壁に寄って上半身をもたれさせる。手を握って名前を呼ぶが、返事どころか焦点さえこちらに合わせてくれない。
ただぼうっと虚空を見つめるラウールに、色々な言葉が蘇った。
『「忘却病」とは、孤独をストレスと感じた脳があらゆる記憶を排除することによって身体を守ろうとする作用のことである。』
『だってTRAGって、能力とか奇病を強制的に進行させるクスリだろ?』
背中に冷や汗が伝い、脳が弾かれたかのように動き出す。
ー症状が強制的に進行するなら、それを止めようとする身体はどう動く?
ー仲間が居ない場合を「孤独」と捉えるのか?そうでないならばさらにおかしい。朝飯以外は基本ラウールと一緒にいたし、声もかけていた。そんな状況で「孤独」を感じるのは...
ー...まさか、孤独を感じなくとも記憶が排除されるようになっている?
「TRAGが効き始めたようですね。」
突如聞こえた穏やかな声に振り向くと扉があいており、朝と同じような笑顔で神父が立っていた。
豆電球の逆光で映し出されるその顔は、先程よりもずっと不気味に思えた。
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もえなっとう(プロフ) - 藤菜さん» こんばんは!いえいえ全然大丈夫ですよ!?いつもありがとうございます! (2021年1月28日 20時) (
レス) id: 9d4a7bc2ed (このIDを非表示/違反報告)
藤菜(プロフ) - こんばんは！余計な事を言ってしまってすみませんでした！続きを楽しみに待ってます！ (2021年1月28日 19時) (レス) id: f78a68b7f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もえなっとう | 作成日時：2021年1月28日 18時
