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「...目黒。」
渡辺に声をかけられるまで、目黒は少年少女をまとめて抱きしめていることに気が付かなかった。少年は驚きのあまり震えが止まり、何も知らない少女はくすぐったそうに笑っている。
「...全部、お前のせいじゃないよ。」
「ッ...。」
「妹を盾にされたのも、こんなところに閉じ込められてるのも、俺が怪我したのも、全部お前の責任なんかじゃない。だから謝らなくていい。」
「...。」
「酷い大人に囲まれて怖かったよな。わかるよ、俺もそうだったから。
でも、そんなこと言ってられない。守るものがあるから強くならなくちゃいけない。妹のためにお前が強くなるんだ。」
「...どう、やって...?」
「なんのために俺たちに能力があると思う?」
じんわり肩が濡れていく。「...う"ん"っ......」と酷く掠れた声で頷いた少年。震えはとうに止まっていた。
解放された腕で少年は妹をぎゅっと抱きしめたあと、頼りがいのある笑顔を見せた。ほっと一息ついている間に宮舘と渡辺が全てのファンタジスタの拘束を解除し、もう一度宮舘が声を上げた。
「今からここを脱出します!外に仲間がいるので、俺達の指示に従って避難を始めてください!」
考察通り他に脱出できそうな扉があることを確認し、大人の能力の把握を進める。大人は子供を挟む形にまとまって走り出す準備をして、ゆっくり扉の外の様子を伺った。
...複数人が階段を降りてくる。侵入したことに気付かれるのも時間の問題だとは思っていたが、こんなに早いとは予想外だ。気を引き締めて扉が開くのを待つ。
突入した軍人の列に、誰よりも早く反応したのは宮舘だった。
自慢の瞬足で咄嗟に駆け出し、人の隙間を縫って「操血」を発動させた。指先から放たれた血の縄は武器を取り出した軍人の体を秒速で縛り上げ、動きを拘束する。
しかし想像よりも人数が多かった。この場に大人数を割ける余裕があるのかただ考え無しなだけなのか、考える暇もないほど縄から伝わる力が強くなる。宮舘の掌から縄となれなかった血液が滴り落ち、彼は眉を顰める。
「涼太!!」
聞き慣れた声が背後から聞こえ、声を出した当人が幼馴染の血線をなぞった。
...瞬間、ジュワっと鈍い音を響かせて血の温度が一気に上昇したのだ。
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り - 面白くて一気に読んでしまいました!お忙しいとは思いますがまた更新再開するのを待ってます!!!! (2022年3月9日 23時) (レス) id: 1d9129f20d (このIDを非表示/違反報告)
もえなっとう(プロフ) - Hano.さん» Hano.さん初めまして、ありがとうございます!これからもぜひお楽しみに...! (2021年11月11日 11時) (レス) id: 9d4a7bc2ed (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - この作品おもしろくて一気読みしてしまいました、、!これからも更新楽しみにしています!! (2021年11月4日 12時) (レス) id: c16f775043 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もえなっとう | 作成日時:2021年10月20日 1時