参りました#35 ページ35
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放課後の図書室は静かだ。
それもそのはず。
ほとんどの生徒が何かしらの部活に所属していて、
授業後のHRが終わればすぐに活動場所に行くからだ。
星川高校の広い校舎の片隅にある図書室。
暇ではない限り、誰も来ない。
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「貸出手続きっつっても、誰も来ねぇし意味ないよね」
新しく追加された文庫をパラパラと捲りながら、慧はゆるりと笑う。
「忙しいのも嫌だけど、やることないのもつまんないね」
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静かに流れる時の中で、
「ねぇ、慧」
「ん?」
「仲直り、できたよ。ちゃんと妬いてもらえた」
ゆっくりと告げた。
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「そっか、よかったね」
「うん…」
なんだか、微笑んでるはずなのに、
慧の顔はひどく切ない。
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「妬いてもらえたなら、俺の出番はもうないかな?」
言いながらさみしそうに笑った。
それに対して、私は何も返せなかった。
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慧がいてくれたからこそ、今がある。
また楽しく笑い合えているのは、
全部慧のおかげなんだ。
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「協力してくれてありがとう。
私はいっぱい助けられたのに、何もしてあげられなくてごめんね」
「気にすんなって、俺は楽しかったよ」
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声も表情も、あまりに優しかった。
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それから私達は依然として誰も訪れない図書室で談笑して、
気がついたら閉室の時間になっていた。
「鍵は俺が職員室に預けてくるよ、三上さん待ってるだろうし」
「ほんとだ!もうこんな時間、…でも」
"そこは素直にありがとう、でいいの"
ふと、いつの日かのそんなフレーズを思い出す。
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「…ありがとう、お願いします」
「よろしい」
顔を見合わせて2人で笑う。
よかった、
ちゃんといつも通りだ。
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「じゃあまた明日!」
そう言って、図書室を出ようとした、
その時だった。
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「…………え、慧?」
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後ろからふわりと、抱きしめられたのは。
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「ごめん、やっぱ俺、まだ諦められねぇや」
そんなことを言いながら、
わたしを解放した。
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「……今のは忘れて」
「…………」
「ほら、三上さん待たせてるよ、
はやく図書室出て」
私を追い出すように急かす言葉の奥で、
慧の瞳がさみしそうに揺れているのなんて、
気づかなかった。
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美香 - 初めまして!めっちゃ知念君格好いいわ!完成おめでとうございます! (2018年1月31日 22時) (レス) id: 56b9cb16b3 (このIDを非表示/違反報告)
衣月(プロフ) - 知念担かつ弓道部員なのでこのお話すごくいいです!更新頑張ってください! (2018年1月7日 19時) (レス) id: 393bdf7cd9 (このIDを非表示/違反報告)
の ん(プロフ) - 読みましたよ、~!更新おつかれさまでした。もちろんです!ずっと応援してますよ!頑張ってください! (2017年12月31日 0時) (レス) id: 3167764a0b (このIDを非表示/違反報告)
もえあ(プロフ) - の んさん» 書き直すかわりにafterstoryを追加しましたので、よければ読んでみてくださいね(o^∀^o)ぜ、全部…!?わわわっ、嬉しい限りですー!ありがとうございます☆これからも応援お願いします! (2017年12月30日 23時) (レス) id: a6b7387403 (このIDを非表示/違反報告)
の ん(プロフ) - 察しがつきました ! 笑 そんなことないですよ!作品を読んでて知念担のわたしにとってはめっちゃきゅんきゅんしました!笑 もえあさんの作品すごく好きですべて読ませていただいているのでこれからも頑張ってください!長文失礼いたしました。 (2017年12月30日 18時) (レス) id: 3167764a0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もえ乃 | 作成日時:2016年6月4日 21時