ノスタルジア (ページ9)

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雨の音が部屋に響く。

…...沈黙。
そりゃそうだ。店員と客のしかも常連ならまだしも二度しか買いに来たことがない店員と客、会話が弾む訳もなく。

ホクトさんは紅茶を飲みながら窓の外を眺めているし私は机の木目を数える。

何か。話題は…

「ホクトさんは、」
「んっ！、ッゴホ」

”最近お店始められたんですか？”と言おうとすると、名前を呼んだところで口に含んだ紅茶を吹き出しそうになった

「大、丈夫ですか！？」
「っン、大丈夫、…すいません」
「最近、お店始められたんですか？」

むせた衝動で手の甲で口元を押えたホクトさんが私を見た

ひと息間が空いて。__いや5秒くらい間が空いてティーカップを机に置いた。

「…元々ばあちゃんがココやってて。よく手伝ってたんだけど最近足悪くしたから俺が代理…みたいな感じでやるようになって」

元々おばあさんが始めた弁当屋を昔からよく手伝っていて店頭にも立っていたらしい。

ーーけれど足を悪くしたおばあさんに”北斗がやってくれたら嬉しい”と微妙な圧をかけられて断ることも出来ず日々弁当屋に立ち続けているらしい。

「この弁当屋、立地も良くないし常連しか来ないような店だから人来ないし別に大変じゃないと思って」

「常連もジジババばっかだから、続々減ってるんだけど。うちのばあちゃんみたいに体壊す人もいればそのままご臨終とか__…」

…わあ、めちゃくちゃ喋るこの人。

接客の様子からてっきり人とのコミュニケーションを図るのが得意じゃないタイプかと予想していたけど、

呆気に取られる私に気付くことはなくホクトさんの口は止まらない。