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そこからはいつも通りの平穏、とはいえないけど変わらない業務的な毎日。
上から振られる、半ば無茶ぶりのような仕事を、息が詰まりそうになりながら片付ける。こんな時も隣のデスクの松田は広い人脈と上手く人に取り入りながら、難なくこなしていた。
懐疑深くて、天邪鬼な自分はそんなこと出来るはずもなく、隣で人懐っこい犬のように上司と談笑する松田を恨めしく見ることしか出来ない
「さすがにお腹すいた…」
「おつかれー。今日、飲み行く？」
「んー…」
就業30分前、何処からか帰ってきた松田が私の椅子に手を置いて覗き込むようにそう言った。
最近飲んでないし。今日は上司にガミガミ言われながら頑張ったし。行ってもいいよね
彼氏のことが不意に頭に浮かんで、慌てて消した。
「…行こうかなぁ」
「っキタ！っしゃ〜〜！いつものとこで良いよね？」
急にやる気を取り戻して業務に取り掛かったのかと思いきや、スマホで行先の居酒屋を予約状況を見ていた。
”いつものところ”と言って私の最寄りを指定してくれるところに松田の人に好かれる要素が見え隠れしている
「彼氏に連絡しといてよ、浮気とかなったらダリーから」
「…あー、」
「ん、なによ」
歯切れの悪い返事をする私に、松田がスマホから目を離して振り返る。
「連絡する必要、無くなったから」
「…え？どういうこと？」
「まあ、…後で話すから聞いて」
「エー！ナニ！」とあからさまに顔をキラキラさせた松田が楽しそうに笑う。彼氏のことは聞かれる度に相談していたし、今回も話を聞いてもらおう…。
終業まであと20分、ため息をひとつ付いてパソコンに向かい直した。
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作者名：鯖 | 作成日時：2023年3月14日 15時
