ノスタルジア (ページ12)

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いつも適当にかける自分のワイシャツの、きっと倍の時間くらい掛けてアイロンをした。

月曜日の仕事帰りにでも寄って渡そうと思って持ってきたのに、退勤しようとすると上司に至急の仕事を振られて、泣く泣く進めているともう22時を過ぎていた。

「お〜わった！月曜からマジ最悪〜〜」

残業の道連れとなった松田が隣で項垂れている。月曜とは思えない疲労が溜まった、これは先が思いやられる.....。

さすがの松田もこんな日に飲みに行こうと言えるほど元気がある訳ではないらしく、そそくさと先に帰って行った。

最寄りに着いた22:30、もう営業は終わっているはずだけど2階にはいるかもしれない。淡い希望で自然と早歩きになった。

「…あれ、電気｣

あの雨の日は21:00頃には店仕舞いしていたはずなのに、まだ店は明るく「営業中」の看板も出されたままだった。

恐る恐る入口へ向かうとショーケースの前には誰も居ない

と、奥で黒い影が動いて思わず体が強ばる。

そっと姿を確認してみると、そこにはキッチンの前でしゃがんだまま壁に腕を着いて俯いているホクトさんだった。

「こんばんはー…」
「…Aさん、｣
「！？ちょっ、北斗さん！？」

私の声に反応してこちらを向いた彼の顔は思いがけず真っ赤で、これはただ事では無いと察する。

私が一歩踏み出したと同時に北斗さんは壁に預けていた腕のバランスを崩して地面に倒れた。