【tn】うそつき ページ8
隣を歩いている君の横顔を盗み見る。
男の子にしては長い睫毛、すっとした鼻筋。羨ましいなんて綺麗な感情じゃなくて、嫉妬なんて黒いものを抱いてしまうくらい整った顔。
傘に当たって響く雨音が辺りを包む空間はすぐそこを車が走っているというのに、外界から私たちだけを切り離しているようにさえ思える。
『雪になると思う？』
口を開くと声に白い吐息も混じった。
｢明日の朝まで降り続いたらなるかもな｣
傘を持つ手を寒そうにさすりながら答える彼に左ポケットに入っているカイロを渡す。
『2つ持ってるから１コ貸してあげる』
｢そんなん気にせんでええのに｣
口では冷たい事を言っているのに、仲の良い友人に見せるのとは違う優しい笑顔をこちらに向ける。
あぁ、ほんとずるいなぁ
傘差してくれてるから、何となく恥ずかしくなって顔を逸らす。
そんな私に気付いてくすくす笑う彼にイラついて右ひじをドスドス当てる。
痛い、痛いなんて言いながらも楽しそうに顔を綻ばせている彼につられて私も一緒に笑った。
『雪積もるといいな』
｢俺は嫌やなぁ｣
『なんで？』
｢寒いし、電車もバスも送れるやん｣
それに混むしな、そう続ける彼の声はいつもより小さくて、きっとこの距離じゃないと聞き取れなかったんだろう、なんて考える。
｢Aは？なんで雪がええの？｣
『雪だるまつくって雪合戦したいから』
｢子どもか！！｣
寒いせいか、距離が近いせいかそれは分からないが、いつもよりずっと彼の声が甘く感じられ変に意識してしまう。
ただの、ただの幼馴染。私たちの関係はそれだけなのに。
気付いたら私よりずっと伸びた背も、低くなった声も、
意識したいわけじゃのに、彼を構成するすべてが視界の端をちらつくから。
好きじゃない、好きじゃないのに、
今はまだこの距離で居たい。近くて遠いこの距離に甘えていたい。
ねぇ、トントン。君はどう思ってる？...なんて嘘だよ。
『トントン、明日も一緒に帰ろうね』
｢なんや急に。ってか毎日の事やろ、別に今更変わらへんよ｣
ずっとこのまま君もそう思っていてほしい...なんてね。
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杏夏(プロフ) - 山田の家さん» レス遅くなって申し訳ありません。コメントありがとうございます。好きだなんて私にはもったいないお言葉、大変痛み入ります。まだまだ 月が綺麗ですね は続きますので楽しんでいただけますと幸いです。 (2020年11月7日 18時) (
レス) id: 516edf94d7 (このIDを非表示/違反報告)
山田の家 - 続編おめでとうございます！あぁ、やっぱりすんごい好きです。 (2020年10月18日 19時) (レス) id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏夏 | 作成日時：2020年10月18日 19時
