【ut】小悪魔な君に ページ5
初めて君と会った時、可愛い子だと思った。
それと同時に、きっとこの子も他のと変わらないんやろって、
時計台の下に一人で、携帯を覗く君を見て声をかけようと思った。
僕の近付く足音にぱっと顔をあげて、見当違いだったなんて言いたげにまた携帯に顔を戻した彼女に声をかける。
ねぇ君、誰待ってるん?さっきからここにいるやん?
そんな言葉を吐きながらさりげなく彼女の携帯を覗くと、そこには彼氏とか友達とのメッセージ画面なんかじゃなくて、1回 〜円 の呟きとそれに対してのおっさんのリプ。
そんな事とは無縁そうな清楚系の顔立ちをしているにも関わらず、いかがわしいやり取りを平気な顔でやっている彼女に、あぁこの子もそういう子なんだと思った。
ねぇ、そんなおっさんやなくて、俺ともっとえぇことせん?
丁度いい位置にあった耳に吐息を混ぜながら囁く。
一瞬驚いたように目を開いて、けれどすぐに口角をあげた彼女は
『いいよ、いくらで買ってくれるの?』
挑戦的な笑みを浮かべてこっちを見た。
重なる吐息に速くなる鼓動。
さらさらと動く彼女の髪一つに心打たれて止まらなくなる。
こんなに強い思いを抱くのが初めてで自分でも気持ちの抑えが利かなくなる。
それなのに彼女はこっちの気持ちを知ってか知らずか『もっと』なんて言ってくるから、
鳴きながらどこか慣れたように言葉を紡ぐ彼女の姿に他の男の影を感じて、独占欲を心の中で燻ぶらせる。
はじめた見たその表情にも喜びよりも他のやつに見せたくないなんて汚い感情を抱いてしまうのは、そんな気持ちになったのは、初めてだった。
時計台の下に寂しく立っていた彼女に対して仕掛けたのは僕の方からだったはずなのに、彼女の瞳に映るのは魔法にかけられた僕の姿。
けどそれでもいいと思ってしまうのは、それだけ初めてあった彼女にこんなにも惹かれてるから。
限界が近いのか僕の下で鳴く彼女は背中に手を回してくる。
その行動さえにも慣れを感じてしまうのはきっと考え過ぎなんかじゃない。顔も知らない相手に嫉妬して、無意識の中で彼女をさらに追い立てる。
突然のそれに驚いたらしい彼女は爪を立てて、必死に耐えようとする。
その姿に愛おしさを感じて小さく笑みをこぼした事にきっと気付いてないんやろな。
事後特有の甘い雰囲気もないまま、すやすやと僕の隣で眠りについた彼女に、僕は時間よとまれなんて女々しい事を考えながら、とった1房の髪に唇を落とした。
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杏夏(プロフ) - 山田の家さん» レス遅くなって申し訳ありません。コメントありがとうございます。好きだなんて私にはもったいないお言葉、大変痛み入ります。まだまだ 月が綺麗ですね は続きますので楽しんでいただけますと幸いです。 (2020年11月7日 18時) (レス) id: 516edf94d7 (このIDを非表示/違反報告)
山田の家 - 続編おめでとうございます!あぁ、やっぱりすんごい好きです。 (2020年10月18日 19時) (レス) id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏夏 | 作成日時:2020年10月18日 19時