【shp】野ばら ページ3
父さんが進めてきた大学に行くために慣れ親しんだ場所を出る事を決めた。
数週間前に受けた付属高校の編入試験の結果が帰って来て、大した思い入れの無い高校をやめた。
送別会でもやろうかと言う、担任に適当に笑顔を張り付けた顔で大丈夫だと告げる。
担任には他の人には伝えないように頼んだから、誰も俺が明日からここには来ない事を知らなくて、でもそれがかえって心地よくも感じた。
飛行機と電車を乗り継いで着いたそこは、本の中の世界に居ると錯覚してしまうほど、緑に囲まれたレンガの屋根が並んだ綺麗な場所だった。
この中の一つがこれから自分の変える場所になるのだと思うと、柄にもなく頬が高揚するのが分かった。
家について荷解きを始めようとすると、両親はこれからいろいろ手続きをしに行くから適当に待っててくれと言って、家を出ていった。
適当に自分の部屋と思しき場所に荷物を置いて、新しい家の中を回る。
けれど日本の家の作りとは違うな、とかだけで別段心惹かれる事もなかったからすぐに暇を感じた。
まだ設定してないからWi−Fiも飛んでないし携帯もパソコンも使えない。
暇やなぁ、ポツリと声を落としても誰ない部屋に響くだけで、何が変わるわけもなかった。
どうしよ...探検でもするか、
散歩とか散策とかって言葉を使わずに、無意識のうちに探検と言う言葉を選んでいるところに、自分でも驚く。
変にテンションが高い自分に笑って、携帯を掴んで外に出た。
なんでかわからないが、両親は都会ではなく郊外を選んだから家の周りには緑しかない。
正直都会へのアクセスも悪いし、周りに何もないのは勘弁してほしいと思ったが、でもそれを言ったところできっとあの人たちは変わる事はない事を知っていたから、何も言わずにここまでやって来た。
我ながら中身のない人間だって事は分かってる。
家の後ろは森になっているんだ、どんな家に住むのか聞いた時に父さんはそう言った。
家の外装とか部屋の配置とかそういうのを訊いたつもりだったのに全く見当違いな答えを返してきて、けれどそれ以上何を聞く気にもなれなかったから、そっかと返したことをふと思い出す。
確かに、そこまで深いというわけではないけどそこそこ広い森が広がっていた。
一抹の好奇心を抱いて森に足を踏み入れる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
杏夏(プロフ) - 山田の家さん» レス遅くなって申し訳ありません。コメントありがとうございます。好きだなんて私にはもったいないお言葉、大変痛み入ります。まだまだ 月が綺麗ですね は続きますので楽しんでいただけますと幸いです。 (2020年11月7日 18時) (
レス) id: 516edf94d7 (このIDを非表示/違反報告)
山田の家 - 続編おめでとうございます！あぁ、やっぱりすんごい好きです。 (2020年10月18日 19時) (レス) id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：杏夏 | 作成日時：2020年10月18日 19時
