【ut】遡行 ページ1
彼のお母さんから、彼が病院に運ばれたという連絡を受け取った。
煙草にお酒に不摂生な生活をしている彼の事だから、最初はそれのつけが出たのかと思ったんだ。
どうしたんですか、呑気に応対する私に対してお義母さんは静かな声で、飲酒運転の車とぶつかってしまったらしい、だから病院に来てほしい と言う。
電話越しの声に圧されて私は急いで病院に向かった。
電車やタクシーを乗り継いで着いた病院で、教えられた病室に足を向ける。
目的階までのエスカレーターは異様に時の流れが遅く感じて、走っても居ないのに呼吸が荒くなっていくのを感じた。
ようやくたどり着いた病室の前には彼の両親が私を待っていた。
『...こんばんは、それで彼は？』
ご両親への挨拶もそこそこに彼の様子を問う。
すると、大粒の涙を瞳から零してお義母さんは口を開いた。
｢...心臓は動いとるし、お話も出来るんよ。体も少しの間は安静にしてれば治るからってお医者さんは言ってはって｣
その言葉に安堵し、ゆっくりと息をはく私をよそにお義母さんは絞り出すのように苦しげに言葉を続ける。
｢稀にあるらしいんよ、事故のショックやったり、打ち所が悪かったりした時に。
落ち着いて聞いてなAちゃん
...いまあの子には、Aちゃんの記憶がない｣
...きおくがない？
アニメとかドラマの見過ぎじゃないの？現実世界でそんなこと、
理解する事を拒む私の脳は、涙を流しながら続けるお義母さんの言葉を右から左へと流していく。
無事だったと素直に喜んでいた心が、急激に冷えて温度をなくしていくのが分かった。
私の様子に気付いていながら彼の両親は私を彼の居る病室に入れようと背中を押す。
考える事をやめた私の脳はそれを拒む命令を出す事をしない。
大人しく病室に入った私を見て、2人は静かに扉を閉めた。
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杏夏(プロフ) - 山田の家さん» レス遅くなって申し訳ありません。コメントありがとうございます。好きだなんて私にはもったいないお言葉、大変痛み入ります。まだまだ 月が綺麗ですね は続きますので楽しんでいただけますと幸いです。 (2020年11月7日 18時) (
レス) id: 516edf94d7 (このIDを非表示/違反報告)
山田の家 - 続編おめでとうございます！あぁ、やっぱりすんごい好きです。 (2020年10月18日 19時) (レス) id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏夏 | 作成日時：2020年10月18日 19時
