21 ページ21
彼のおかげでそいつらのうめき声を背に感じる。
よほど怒っているのか、今までそんなことなかったのに、っていうくらい彼が私の手を強く握るから、解くに解けなくてことが終わっただろうに、いまだ私は公園の中に居る。
うめき声さえも掻き消すような沈黙が包んで離さない。
なんとかそれから逃げようとして彼に声をかける。
『...ありがと』
喉に張り付いたように、外に出ることを拒む言葉が酷く扱いづらい。
｢いや...、怪我はしてへん？｣
ぎこちなさを感じる会話でも、久しぶりに私だけのため発される言葉が嬉しくて、ほんの少しだけいまだに寝転がっているそいつらに感謝する。
『してない。ごめんね、わざわざ来てもらっちゃって』
｢別に、｣
そこから2人別れて帰路に着くなんてことはなくて、いつかと変わらずに私の斜め上に彼の顔がある。
そのいつかと違うのは、私とショッピの間に確かな溝があること。でもそれ以外は周りの風景も、ゆるりと流れる風も、遠くに聞こえる楽し気な少年たちの声も何も変わらない。
99％は変わらないままなのに、残りの1％にも満たないそれが形を変えたせいで、元の形に戻ることは叶わない。
君とのこの関係に甘えて、居心地のいいこの場所に居続けたせいで、君は知らない先輩に取られてしまった。
甘えることなく、伝えていればきっとこの現状は変わっていたのかもしれない。
何も伝えられないまま、伝える資格も消えてしまった。
たった2文字だったのになぁ
｢なぁ、A、いままでごめん｣
沈黙を破って言葉を紡いだのは彼の方だった。
何も言わずに先を促す。
｢たくさん迷惑かけたきた、から、それに...、｣
拙く編み出される言葉たち
それに の後は何も聞こえなくて、聞きなおそうと問いかけようとする。
なのに、
響いたのは別の声
『やっとみつけた、急いで出ていっちゃうから心配したんだよ？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 406人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天天(プロフ) - 好きです。杏夏さんの世界観っていうか書き方というか…ドストライクです！ありがとうございます。これからも頑張ってください！ (2022年10月10日 21時) (
レス) @page23 id: c861e4568e (このIDを非表示/違反報告)
なな - この話、面白いです！更新待ってます。これからも頑張ってください。 (2021年7月15日 18時) (レス) id: eb678d68cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：杏夏 | 作成日時：2021年4月2日 22時
