夜食 ページ26
我々国幹部棟の一室で、ある男が書類を確認して大きな息を吐いた。
彼が咥えている煙草は随分と短くなっており、それを灰皿に押し付けた男はもう一本を取り出そうとして、ふと腹が減っている事に気がついた。
窓から外を眺めるが、もう太陽は沈みきって月が空に煌々と輝いている。
月と同じ髪色を持ったその男は煙草を懐に仕舞い込んで、食堂へと歩みを進めることにした。
節電の為にと明かりの消された廊下は暗く、静かである。
使用人や軍人たちも各々の時間を過ごしているのだろう、人の気配は全くない。
男が食堂の前まで来れば、少し開いた大きな扉から中の明かりが廊下まで漏れ出していた。
どうやら先客がいるようだ。
こんな時間に食堂を利用するような人間は、彼の仲間にはいない。
一体誰なのだろうと扉を開ければ、最近よく彼らと食事をともにする女性の姿があった。
「なんや、Aさんか」
そう声を掛ければ彼女も彼に気づいたようで、鍋を覗き込んでいた顔を上げた。
「コネシマ様、どうなさいました？」
「腹減ったから、食いもん探しに来ただけや。そっちこそ何しよるんや？」
彼がそれだけ伝えれば、彼女は納得したように頷き、自身が覗いていた鍋の中を見せた。
「夕食を食べ損ねてしまったので、夜食を作っておりました。宜しければ、コネシマ様もいかがですか？」
そういった彼女の手元の鍋ではパスタ用の麺が茹でられていた。
「ええん？」
「はい、多めに作りましたし。1人では食べきれませんので、ぜひ」
彼女によってコネシマの目の前に用意されたナポリタンは、美味しそうな香りをしていた。
真っ赤な麺とたっぷり入った具材はかなりの満足感を味わえそうだ。
「おお、美味いな！何やAさん、料理も出来たんやな！」
「まあ、人並み程度にですけど。もちろん、ここの料理人の方々には負けますし」
彼女はそう謙遜するが、コネシマの舌をうねらせるには十分すぎるほどの味だった。
コネシマは出されたナポリタンをペロリと平げ、満足そうに話を始めた。
内容はいつものように幹部の一人である鬱のクズ話である。
Aはそれを聞きながら食器の片付けを終え、食後のコーヒーを出してその話に付き合う。
「そんでそん時大先生がな！」
「鬱様は、一度女性関係を整理されたほうがいい気がしますね」
我々国軍基地の夜はこうして更けていった。
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スノードロップ(プロフ) - なめらかさん» 優しいお言葉有難うございます。更新早めて行けるよう努力します (2021年10月4日 13時) (
レス) id: 06ba610413 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 読みやすくて続きが気になって一気に読んでしまいました…！続き楽しみにしてます！ (2021年10月3日 23時) (レス) @page12 id: bcf5f4df92 (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - 雪さん» 有難うございます。更新が早くなるよう、頑張っていきます (2021年9月22日 22時) (レス) id: 06ba610413 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 好きです！続き楽しみに待ってます！ (2021年9月20日 14時) (レス) id: 4b6a02972f (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - 銀狐さん» 温かい言葉を有難うございます！頑張らせていただきます！ (2021年9月14日 17時) (レス) id: 06ba610413 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノードロップ | 作成日時：2021年9月13日 1時
