鍛錬 ページ24
ht side
昼食を済ませて再びAさんと基地内を歩き回る。
午前中には行けなかった書物庫と管理室に顔を出し、ロボロとエミさんに挨拶をして、本日最後の目的地まで歩いていく。
大きく響く声と金属のぶつかる激しい音が扉の外側にまで聞こえてくるそこは、我が軍が誇る訓練場の一つである。
近距離、遠距離、暗殺のそれぞれの部隊がそれぞれ集い、朝から晩まで訓練を行っている。
午後ならここは、主に近距離部隊がここで手合わせを行っているだろうと来てみたが、金属音から近距離部隊なのは確定だろう。
「ここは訓練場の一つだよ。他の訓練場は一棟全部を占めてたりするから、ここは他より狭いんだけど、その代わりに設備が充実してるんだ。体動かしたいとかなら空いてる所を教えてくれると思うから、幹部に聞いてみてよ」
「はい、承知しました」
「ちょっと見ていく？」
「お邪魔にならないのでしたら」
扉を開く音は室内の騒音に掻き消され、隊員達はこちらに目も向けず手合わせを続けている。
邪魔にならないように、そして戦闘に巻き込まれないように扉の近くで鍛錬の見学をする。
そっと隣に立つAさんに目を向ければ、目線だけをあちこちに向けて鍛錬の様子を眺めていた。
ここに来てから事務作業ばかり押し付けられていた事もあってか、体を動かしたいのかもしれない。
「Aさん、基地内の案内はこれで終わりだし、良かったらちょっと鍛錬に参加しない？ほら、あそこの奥の方で近距離の女性兵士が組み手してるし、最近事務作業ばっかりでしょ？」
「え…良いんですか？」
勿論、と頷けば顔を綻ばせて、彼女は軽い足取りで女性兵士の方へ駆けて行った。
俺も少し体を動かすか、と暇そうに兵士達の監督をしているシャオロンの方へ歩み寄った。
しばらくシャオロンと手合わせをしていれば満足したような明るい顔をして、Aさんが近寄ってきた。
「もう良いの？」
「はい、久しぶりに動けて楽しかったです。シャオロン様、すみません。訓練中にお邪魔してしまいまして」
「あー、ええでええで。また来たかったら、好きに来たらええわ」
「有難うございます。では、兄に呼ばれていますので」
Aさんは、端的にそれだけを伝えると、綺麗な礼をして訓練場の扉の向こうに消えていった。
後に女性兵士が話していた『一撃も入れられなかった』という言葉に、俺とシャオロンは背筋に氷を当てられたような寒気が走った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 427人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スノードロップ(プロフ) - なめらかさん» 優しいお言葉有難うございます。更新早めて行けるよう努力します (2021年10月4日 13時) (
レス) id: 06ba610413 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 読みやすくて続きが気になって一気に読んでしまいました…！続き楽しみにしてます！ (2021年10月3日 23時) (レス) @page12 id: bcf5f4df92 (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - 雪さん» 有難うございます。更新が早くなるよう、頑張っていきます (2021年9月22日 22時) (レス) id: 06ba610413 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 好きです！続き楽しみに待ってます！ (2021年9月20日 14時) (レス) id: 4b6a02972f (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - 銀狐さん» 温かい言葉を有難うございます！頑張らせていただきます！ (2021年9月14日 17時) (レス) id: 06ba610413 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スノードロップ | 作成日時：2021年9月13日 1時
