助けたい ページ40
確かに、レオスさんの言う通り部屋に入るのは軽率すぎた。これでは何があっても私の責任だ。
アクシアさんは今は寝ているだろうから、とりあえず掃除と昼食の準備を済ませる。
一通り終わったところで、アクシアさんと話がしたくて部屋の前まで来た。
「アクシアさん?Aです。少しお話できますか?」
「Aちゃん…」
「アクシアさんは、何に追い詰められているんですか?」
「っ…」
アクシアさんが言い淀む。
「大丈夫です。いまは他に誰もいないですし、時間もたっぷりありますよ」
「…」
「私はずっとここにいますから」
そう言って、ドアに背を預けて座る。
私になにかできる事があるのなら、助けたい。
「おれ、怖いんだ……」
しばらくして聞こえた声は思いのほか近かった。
ドアを隔てているとはいえ、アクシアさんの息遣いと震える声が耳に届く。
「怖い…?」
言ってしまいたい、でも話していいのかわからない
そんな風に、口を開きかけては閉じる様が浮かぶような間が空いた。
こうやっていると、世界に私達2人だけ取り残されたみたいだ。
長い沈黙のあと、アクシアさんが口を開く。
「はじめは、嬉しかったんだ…」
ゆっくり、1つずつ、壊れてしまわないように大切に言葉を紡いでいるのがわかる。
「教官に、『クローネには期待してるぞ』って…言われて、おれ、認められたんだって思って…」
「それで、嬉しかったんだ…」
たどたどしい音がドアを通って響く。
「ある日…先輩に呼び出されて…『パイロットの耐久訓練だ』って言われて、殴られて…」
「ただ何回も、何回も殴られて、蹴られて、おれ、なんでこんな事されてるんだろう、ってわからなくなって…」
言葉を失う。
アクシアさんは、つまり、イジメに遭ってたということだ。
「ねぇ、おれって変なのかなぁ?」
明らかに震えた声で私に訊ねる。
「おれ、人間じゃないんだって」
「クローネっていう名前ってだけなのに、『お前はクローンなんだろ、気持ち悪い』って蔑まれてさ」
「自分がなんなのか、わからなくなったんだよね」
笑う必要なんてないのに、笑って話せる内容じゃないのに、ははっ、と乾いた笑みを零しながら話す。
名前を否定するなんて、そんなの最低だ。
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頭華(プロフ) - くらげさん» えへへ…コメントありがとうございます♡ (2021年10月5日 22時) (レス) id: f03d065939 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ヒィ…おそろしい…axくん…まさかここでクローンネタがくるとはって感じです想像の斜め上をいかれた流石すぎる…本日もお疲れ様です (2021年9月28日 17時) (レス) @page41 id: 8ae060a4c4 (このIDを非表示/違反報告)
頭華(プロフ) - Fineさん» コメントありがとうございます!勝手に脳内で博士の声で再生してしまいました笑 アクシア君の抱えているものがうまく描写できてたらいいな… 頭抱えて飛んで頂けたら幸いです! (2021年9月28日 2時) (レス) id: f03d065939 (このIDを非表示/違反報告)
頭華(プロフ) - くらげさん» ありがとうございます!重たいですよね笑表情筋ぶっ壊れてほしいですねぇ〜 (2021年9月28日 1時) (レス) id: f03d065939 (このIDを非表示/違反報告)
Fine(プロフ) - あぁぁあぁぁあ何ですかこれぇ!?!?!?ア゙ア゙ア゙重くて好き〜こんなの待ってました〜!!!!私の心臓が持ちませーん!いつも更新楽しみにしてます!アクシア……君は一体何を抱えているのかい……それ次第では私は頭抱えて飛ぶぞ……。 (2021年9月26日 16時) (レス) @page37 id: f4f4fca585 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頭華 | 作成日時:2021年9月5日 2時