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「やっっっば!!!!!」
パンツを履き替えて、髪型をセットして、そろそろ出てもいいかな?なんて思って腕時計を見れば時刻は11時の10分前を指している。
(嘘でしょ、どんなに走っても駅まで20分はかかるのに!?)
せっかくあんなに早く起きられたのに、まさか前髪が決まらないから、なんて女子高校生みたいな理由で待たせることになるなんて。
…これが山本さんとかノブだったら間に合ったかもしれないけど、あいにく俺はルール違反スレスレの6番人気だし。
スニーカーの靴紐をきつく縛ってから、大きく息を吸い込んだ。…なんか知らんけど行ける気がする。走れるところまでは走る。よし、今日から俺がコントレイルだ。
玄関のドアを静かに閉じると、全速力で駆け出した。
「で、それが20分も遅れて来た理由ってことね。」
「………………すみません」
「まぁ、俺もさっき着いたからばっかりだから大丈夫だけどさ」
「コンビニでコーヒー買ってるくせによく言いますよね」
「あ、こうちゃんの分もあるけど飲む?」
「……いただきます。」
いやぁ、汗だくで走ってくるこうちゃんまじゴリアテだったわぁ〜なんて顔を覗き込んできた伊沢さんに思わずむすくれた態度をとってしまう。
なんなら、俺が駅に着いた時の第一声はそこらの人にバレるだろってくらい大きな声での『頭ぼっさぼさじゃん!!』だったせいで、謝るタイミングをすっかり逃してしまった。…本当はちゃんと謝りたいのに。
「…ん、っていうか今日いつもよりおしゃれじゃね?」
「…………は?」
「あ、ときめいちゃった?」
…ほんっと、許せない。
不意に優しさを見せてくるのも、そんな優しさにときめいてしまう自分のちょろさも。どうせこんな軽いセリフも、俺のいつもの調子を引き出すためなんだろ。知ってんだよ、そのくらい。
「…あ、やば、伊沢さん、今何時ですか?」
「えぇ…まぁじで自由じゃん……あ、こっちミラノの時間だったわ」
「そういうのいいですから」
「11時38分」
「え、43分の電車に乗りたいんですけど」
「は?やばくね?」
『…まだ走れる?』という言葉に頷き、走り出す。
正直、体力なんて限界だけど、こっちの入口から入ると早いだとか俺が走って切符を確保するだとかぎゃあぎゃあ騒ぐのはなんだか俺たちらしくて楽しくて、気付いた時にはさっきまでの疲れなんて嘘みたいに消えていた。
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みたらし(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございます!ちょうど現在、進行形で後日譚を考えているのでもしかしたら少し攻めた内容ですがそのうち上がると思います……私もizko至上主義なのでるるさんのような方に出会えて嬉しいです! (2022年11月23日 11時) (レス) id: f3734eb581 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - izko至極主義なので最高の作品に出会えました!面白かったです!作者さまの気が向いたらちょっと攻めた続編も読んでみたいです。 (2022年11月18日 6時) (レス) @page31 id: ba5a518648 (このIDを非表示/違反報告)
みたらし(プロフ) - winnipandaluxoさん» 感想ありがとうございます🙇🏻♀️筆者、いつもの2人が大好きなので結局ふざけてしまいました…共感していただけてとても嬉しいです!続編については他の誰か目線や後日談などを考えていたのですが、機会を伺って書いてみたいと思います。 (2022年9月25日 7時) (レス) id: 43a394d89b (このIDを非表示/違反報告)
みたらし(プロフ) - きゃんどるさん» うわ😭そう言っていただけて何よりです🙏🏻本日最終回まで更新したので良かったらぜひ見てみて下さい! (2022年9月25日 7時) (レス) id: 43a394d89b (このIDを非表示/違反報告)
winnipandaluxo(プロフ) - 凄い楽しかったです。切ないとこからいつもの2人になる感じ最高でした。続編楽しみにしてます (2022年9月25日 5時) (レス) @page31 id: 4f7830c1e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みたらし | 作成日時:2022年6月16日 16時