【QK】知りたくなかった。(izko)【BL】

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『動物園のチケットが余ってるので、今度一緒に行きませんか。』


焦るといつも誤字るからちゃんと確認しないと。
よし、これで大丈夫。送信ボタンを押す手が震える。

1人の部屋はやっぱり静かで、小さいため息でもはっきり聞こえてしまうからなんだか一層どきどきする。

ちなみにチケットが余ってるというのは全くの嘘。この前の休みに、記事の取材も兼ねて直接買いに行ってきた。我ながら健気すぎる。


｢…え、うそ、｣


メッセージの下に既読の二文字が現れて思わず自分の目を疑った。腕時計を見ると、既に時刻は23時を回っている。
自分で送っておいてなんだけど、伊沢さんは忙しいから、返信は気長に待てばいいかって思っていた。なのに、まさかこんなに早く既読がつくなんて。

(え、どうしよう。めっちゃ嬉しいんだけど。)

本当にオフィスで送らなくて良かった。きっと、今、俺の顔は見せられないくらい真っ赤になっているから。指の隙間から画面に目を戻すと、既に返信が来ていてさらに鼓動が速くなる。


『思ったより可愛いデートスポットでびっくりした』
『来週の日曜なら空いてるよ』


文字列を見てすぐにスケジュール帳を確認する。来週の日曜日は……なるほど。よし、髪を切りに行くのは明日にしよう。

『俺も大丈夫です！！』

あ、クマのスタンプもつけとこ。
思わず頬が緩む。

今だけは、何もかも忘れて伊沢さんと会えることだけを考えさせて欲しい。

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