【QK】知りたくなかった。(izko)【BL】

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まずいことになった。
やっぱり、欲張るもんじゃなかったんだ。

後悔に苛まれるお昼時。天気は快晴。
今の俺の心情とはまさに正反対だ。


｢…伊沢さ……今度撮影する企画なんだけど……｣

｢…あぁ、それだったらもうこっちの案の方が……｣


(…だめだ。)

向こうのテーブルで話してるはずなのに、
目が、耳が、伊沢さんのことを勝手に追ってしまう。どうしよう。この関係は伊沢さんのことを忘れたくて始めたはずなのに、これじゃあ全くの逆効果じゃないか。



…でも、会って、話して、キスをして。
今の俺と伊沢さんの関係って、一体何なんだろう。
前の方が、もっと上手に付き合えていたんじゃないか？

デスクの引き出しを開けると水族館のチケットが目に入る。
…これは、誰か他の人に使ってもらおう。
伊沢さんと2人で歩くなんて、この前までは普通に出来てたけど、もうきっと恥ずかしくて耐えられたもんじゃない。



｢…こうちゃーん、大丈夫？｣


ふと、降ってきた柔らかい声に顔を上げると、ふわりとした黒髪と鮮やかなパーカー姿が視界を彩る。

｢…あ、はい、すみません。少しぼーっとしてました…｣

山本さんは年上だけど、気配りができるだけじゃなくて、人懐っこい笑顔と小さい背丈もかわいくて、姿を見るだけで癒される。

(俺も、こんな風に魅力的だったらなぁ)

って…何考えてんだろ、俺。
マイナス思考をかき消すように、頭を振ってから向き直す。
怪訝そうな眼付きに少しひるむけどあくまで平静を装う。

｢……こうちゃん、最近ちょっと無理してない？｣

｢や、別に…そんなことないですよ。｣

｢…分かった。じゃあ、一緒に休憩しよ？｣


｢それならいいでしょ？｣と笑顔でコーヒーを渡してくれる山本さんはあまりにも真っ直ぐで、明るくて、隣に立つにはちょっぴり眩しい、



(こんな、嘘つきの俺とは大違いだなぁ)

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