【QK】知りたくなかった。(izko)【BL】

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(……あれ？)





自分の口をついて出た言葉なのに、耳を疑う。
でも、口を押さえたときにはもう遅かった。



｢え？｣




まん丸の目をさらにまん丸にするこうちゃん。
…やっぱり、いつもよりもかわいく見えるのは酒が入ってるせいだ。


｢あ、いや、相手の人が男性慣れしてるんだったら練習しておいてもいいかなって思っただけで、｣
｢好きな人とする前に練習でも俺なんかとするのは抵抗あると思うし、｣
｢まあ、俺はね？別に、乗りかかった船だし、こうちゃんが気にしないなら気にしないよって話で、｣


必死に弁解をする俺と、相変わらずぽかんとした顔のこうちゃん。
っていうか、なんで俺こんな必死なの？これじゃあまるで俺の方がキスをしたくて必死にごまかす奴みたいになってるじゃないか。酒の勢いって恐ろしい。

対するこうちゃんはさっきからずっと真っ白のままで、俺の必死の形相が届いてないであろうことだけが唯一の救いだ。


｢…え、と、｣


しばらくして、目を2、3回ぱちぱちさせたかと思うと、こうちゃんの顔に色彩が戻っていく。どうやらスリープモードから帰ってきたようだ。

『ちょっと、待ってくださいね』とつぶやいて、顎に手をあててから、苦々しい顔をする。それから、グラスの残りを飲んで、ゆっくりこちらに目を向ける。
たったの数秒のことだったはずなのに、なんだかスローモーションのように長く感じられて、こっちまで妙に緊張してしまう。




｢……じゃあ、お願いしてもいいですか？｣




そう笑ったこうちゃんは、いつも感情表現が豊かな彼には珍しく、何を考えているか全然わからなくて。
…でも、

(よかった。断られなかった。)

なんて、ひとり密かに不透明な安心感に浸っていた。

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