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「ねぇ、廉くん。もう一つ訊いてもいい？」
どちらともなく離れた二つの身体。
まだ残る温もりが紺碧の夜に消されてしまう前に、
向き合った彼の熱っぽい瞳にしがみついた。
これまで彼が私に向けてきたものを必死にかき集めて。
言葉も、行動も、声も、表情も、感情も、温度も
今知る限りの彼をもう一度自分の中に落とし込む。
「……私と廉くんって、前にも会ったことある…？」
『もう何回も会っとるやん』
「そうじゃなくて！もっと前。……あの合コンの日より前。私と会ったの、あの日が初めてじゃなかった？」
私にとっては、この世界に放り込まれた最初の日で、廉くんに出会った最初の場所だった。
だけどもし、この世界のキャラクターであるはずの廉くんが、それよりも前の私を知っているのだとしたら。
もし神宮寺くんが言っていた通り、私が失くしている大切なモノが目に見える形あるものじゃなく、思い出のようなものだとして
その中に、廉くんが存在しているのだとしたら──
視覚も聴覚も触覚も
外部から与えられる刺激すべて
今この世界に何が紛れ込んでこようとも
私は彼から決して目を逸らさなかった。
『何言うてんの？あれが初めましてやろ』
彼の瞳が下を向き激しく泳ぐとき、それは偽りを表す。
「じゃあ、もう一つだけいい？」
『んはっ。どんどん増えてくやん』
彼が小さな笑みを放ちながら右方向に視線を投げるとき、それは困惑を表す。
私の身体のどこかで疼く何かがそう教えてくれる。
「前に家に来た時、私に��ほんとに覚えてないの？��ってきいたよね？」
──お前、ほんまに覚えてないん？
あの時は何もわからなかった。
考える余裕さえなかった。
だけど今、私の中で沸々と轟き始めたものが見えなかった何かを、靄をかき分けてその先へと導いていく。
「あれ、どういう意味だったの？」
廉くんの顔から徐々に色が失われていくのがわかる。
でもそこに浮かぶのは、恐れとか絶望とかそんな類のものじゃなくて、驚きや期待のようなものが混じったもののように見えた。
『……何か、思い出したん？』
「わかんない。わかんないけど、」
あの時と同じ、探るような瞳がゆらゆらと揺れる。
光を求めて渦巻いていく幾多の謎が、
胸の奥を急速に駆け巡って全身の熱を上げていく。
「もっとずっと前から、廉くんを知ってるような気がするの」
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マラム - 初めまして！とても素敵なストーリーで最後は少し涙ぐんでしまいました笑(*´∇｀)是非、続編も読んでみたいです。宜しくお願い致します！ (2022年2月14日 16時) (
レス) id: 4a6419f64c (このIDを非表示/違反報告)
非常口(プロフ) - 香奈さん» 香奈さん コメントありがとうございます。読んでくださり、嬉しいお言葉までくださって本当に愛感謝です(* . .)"今後も温かく見守っていただけたら幸いです。よろしくお願いします！ (2021年9月23日 13時) (レス) id: 2fe7817164 (このIDを非表示/違反報告)
香奈 - 初コメント失礼します。こちらのお話とっても面白くて夢中になって読ませていただきました！とっても読みやすかったです♪また更新を楽しみにしていますねヽ(´▽`)/ (2021年9月23日 8時) (携帯から) (レス) id: ab01dcd0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2021年9月22日 19時
