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驚いたように大きく丸く見開かれた瞳は、
私を捉えたまま動かなくなった。
「あっ、いや、ごめん。変な意味じゃなくて！どこかで嗅いだことあるいい匂いだな〜って。……えっと、結構好きな匂いだから気になっちゃって。単純に洗剤の匂いかも。ははっ」
ダメだ、絶対に引いてる。
何の匂いか確かめたかっただけなのに完全に空回った。
廉くんだけ時が止まったように立ち尽くしたままで、その顔には愛想笑いさえも浮かばない。
「ごめん、忘れて！」
居た堪れなくなって前に向き直ろうとしたそのとき、
それを阻止するかのように突然掴まれた腕は、一瞬の隙も与えられずそのまま身体ごと引き寄せられた。
「ちょっ…」
視界から廉くんが消えた。
身体中の熱が上がっていくのは、
この冷たい夜の中、人の体温に触れたからだろうか。
細い腕で私を包んでいる彼の温もりのせいだろうか。
それとも、その相手が廉くんだからだろうか。
思いのほか強い力が込められている腕の中、
戸惑いも相まって身動きが取れない。
『たぶん、洗剤やなくて香水』
「え…？」
不意に耳元で揺れた声。
無意識に止めていた息をゆっくりと吐いた次の瞬間、
さっきまで微かに香っていた廉くんの匂いをすぐ近くに感じたかと思えば、その爽やかな空気は鼻から身体中にふわりと広がった。
やっぱり知ってる。この匂い。
それに、この感覚も。
『誰か同じのつけとった？』
再び耳元で聞こえてきた声が、記憶を思い起こさせようと心にこだまする。
「……わからない。でも、懐かしい感じがする」
『懐かしい、か』
「うん。これ、どこで買った？」
『わからん。貰いもんやから』
お互い顔を合わせないまま繋がれていく会話。
廉くんが私を離そうとしない理由はわからないけれど、
私が廉くんから離れようとしない理由は、
とっくに弱まっていた彼の腕の力はもちろん関係なかった。
身体に巻き付く細い腕も、
背中と頭に添えられた大きな手も、
温かくて落ち着く薄い胸板も、
首元に埋められた小さい顔の重さも、
頬に触れる柔らかい髪の毛も。
私に触れる彼のすべてを
私は、間違いなく知っていたからだ。
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マラム - 初めまして！とても素敵なストーリーで最後は少し涙ぐんでしまいました笑(*´∇｀)是非、続編も読んでみたいです。宜しくお願い致します！ (2022年2月14日 16時) (
レス) id: 4a6419f64c (このIDを非表示/違反報告)
非常口(プロフ) - 香奈さん» 香奈さん コメントありがとうございます。読んでくださり、嬉しいお言葉までくださって本当に愛感謝です(* . .)"今後も温かく見守っていただけたら幸いです。よろしくお願いします！ (2021年9月23日 13時) (レス) id: 2fe7817164 (このIDを非表示/違反報告)
香奈 - 初コメント失礼します。こちらのお話とっても面白くて夢中になって読ませていただきました！とっても読みやすかったです♪また更新を楽しみにしていますねヽ(´▽`)/ (2021年9月23日 8時) (携帯から) (レス) id: ab01dcd0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2021年9月22日 19時
