#27 ページ27
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ならば、家に着いたらすぐに眠る作戦、だ。
バーのある通りに佇んでいたこぢんまりとした居酒屋に入り、夜ご飯を兼ねて適度にお酒を体に流し込んでから早めに席を立った。
まだ浅い夜の冷たい風にあたりながら、気分がふんわりと心地のいい状態を保って帰路に就く。
いい感じ。このままベッドに寝転がれば、すぐに眠りに落ちることができる。
何も見聞きしたりせず、余計なことも考えずに朝を迎える。
そのはずだった。
辿り着いたマンションのエントランス前。
思わず足を止めたのは、目に映った光景が、前にも見たことがあるものだったから。
そこに座り込む人影は、いつの日かと同じ、
細い体を折り曲げてスマホの画面と睨めっこしている、廉くんだった。
一瞬、慄いた。
突如蘇るあの日の出来事。
岸くんと私に浴びせられた怒号も、陰に覆われた表情も、闇色に染まった瞳も。
帰り際に放たれた言葉も、透き通った声も、切なげな空気を纏って消えていった背中も。
決して忘れていたわけじゃない。
ただ、それどころじゃなかったし、無意識に思い出さないようにしていた気もする。
あれ以来、私は彼の目が怖かった。
色素の薄い透明な茶色の瞳にすべてを見透かされているみたいで。その奥に感じる漆黒の海のような深さが忘れられなくて。
何色にも変化するガラス玉は、ずっと頭の片隅で揺れていたのかもしれない。
気配に気づいたらしい彼が顔を上げたと同時に、私は視線を合わせることなく小さな会釈だけをして彼の前を通り過ぎた。
『待って』
いやだ。
心はそう叫んだけれど、体は彼の声に反応してピタリと止まる。
それでもこの場から早く立ち去りたい気持ちが言葉を促して、まるで用意していた台詞のように、私は一息でこう言った。
「紫耀くんなら今日はお友達と会うみたいだよ、家に連れてくるみたいだし、用があるなら今度にした方がいいかも」
くるっくる巻き髪の友人の甘ったるい匂いを思い出しながら、どこか鬱屈した気持ちを発散させたい気持ちもあったかもしれない。
思いのほか語気が強まり刺々しく放たれた声に、ほんの少し後悔した。
『紫耀やなくて、』
俯く私に返ってきた言葉は、驚きや困惑をも超えて、なぜだか残酷なもののように聞こえた。
『Aに会いに来たんやけど』
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マラム - 初めまして！とても素敵なストーリーで最後は少し涙ぐんでしまいました笑(*´∇｀)是非、続編も読んでみたいです。宜しくお願い致します！ (2022年2月14日 16時) (
レス) id: 4a6419f64c (このIDを非表示/違反報告)
非常口(プロフ) - 香奈さん» 香奈さん コメントありがとうございます。読んでくださり、嬉しいお言葉までくださって本当に愛感謝です(* . .)"今後も温かく見守っていただけたら幸いです。よろしくお願いします！ (2021年9月23日 13時) (レス) id: 2fe7817164 (このIDを非表示/違反報告)
香奈 - 初コメント失礼します。こちらのお話とっても面白くて夢中になって読ませていただきました！とっても読みやすかったです♪また更新を楽しみにしていますねヽ(´▽`)/ (2021年9月23日 8時) (携帯から) (レス) id: ab01dcd0f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2021年9月22日 19時
